ホウ素中性子捕捉療法を実用化ー20年度に膵臓がんから

20年度から膵臓がんで治験開始

今日の日経電子版の記事です。

薬剤でホウ素を取り込ませたがん細胞に中性子線を照射して、がんだけを破壊するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を実用化する。X線治療より効果が高く、被曝(ひばく)量もがん細胞の近くでも5割未満に抑えられる。

BNCTを用いた装置は住友重機械工業や東芝が開発する。ただ多くの機器が大型で専用の設置室を設ける必要があるため、投資額が40億~80億円に達していた。福島SiCは最新の半導体で装置を小型化して価格もX線装置に近い10億~15億円に抑えるという。

1月にベンチャーキャピタルから3億円の出資を受けた。近く動物による前臨床試験を始める。20年度にも病院への設置を目指す。まずはすい臓がんの治療を狙う。

この話題は、当ブログでも取りあげたことがあります。国立がん研究センターが開発しているBNCTは、体表面に近い腫瘍しか対象になりませんが、この装置なら膵臓がんを狙うことが可能だと思っていました。

小さいですよね。(株)ロームが開発中の中性子発生源:SiC加速器中性子源・BNCT用実機。

小さいので、患者を囲むように多数配置することができ(多門照射)、身体の奥深くまで中性子を照射することができます。

小型BNCTの特徴

SiC-BNCTによるがん治療の特長

  • 今回の研究開発では、特に肝胆膵 (肝臓、胆のう/胆管、すい臓) を対象としたBNCT治療の実用化を目指す。
  • 治療による痛みや熱さはなく、原則1回の照射で完了する。
  • ホウ素化合物の反応を利用してがん細胞を破壊するため、正常細胞とがん細胞の混在するがんにも効果を発揮する。
  • 特に有効ながんは、進行がんの40%が適応となり、悪性黒色腫、脳腫瘍、頭頸がん、中皮腫、膵臓がん、腹膜転移等に有効である。

原理的には光免疫療法と似ている

BNCTの原理は、患者にホウ素(10B)を含む薬剤を投与し、がん細胞に取り込ませたうえ、加速器を利用して熱中性子を照射します。

がん細胞にのみ取りこまれたホウ素を含む薬剤は、熱中性子を照射されることでホウ素(10B)がリチウムの原子核(7Li)とα線(ヘリウムの原子核)に核分裂します。生じたα線の飛程はせいぜい10μmほどなので、がん細胞内にしか影響しません。

  10B+n(中性子) → 7Li + 4He (α線)

核分裂で発生した高エネルギーのα線によってがん細胞のDNAがズタズタに破壊され、がん細胞は死滅します。ホウ素を取りこんでいない正常細胞にはほとんど影響を与えないと考えられています。

光免疫療法も、がん細胞の表面に、がん細胞だけに特異的に結合する抗体と言われる化学物質に、フタロシアニンとも呼ばれるIR700という染料をくっつけておき、700nmの近赤外線をこれに照射すると「起爆」してがん細胞の表面(細胞膜)を破壊する、というものです。

SiC-BNCTはアルファ線でがん細胞を破壊し、光免疫療法は近赤外線で細胞膜を破壊する違いはあります。

光免疫療法よりもこちらの方が膵臓がんには早く実用化されそうな気がします。

ベンチャー企業だから開発が早い

特徴的なのは、どちらもベンチャー企業が手がけているということです。BNCT自体は日立製作所などが国立がん研究センターのものを手がけていますが、実用化はずっと先でしょう。光免疫療法も、アメリカのベンチャー企業であるアスピリアン・セラピューティクス社に開発を任せています。ベンチャー企業の方が、実用化に向けて必死になるからという理由です。

こちら↓は、国立がん研究センターの記事。膵臓がんには使えません。


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