今日の一冊(95)『がんになっても心配ありません』

がん研有明病院の先生方が執筆している本です。がん研有明という病院の特徴を紹介しながら、最新のがん治療、がんと付き合うための知識を紹介しています。

この手の本は教科書的になりがちなのですが、この本では先生方が本音で書かれています。

がんになっても心配ありません

がんになっても心配ありません

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現状では「遺伝子パネル検査」は力不足

例えば、2018年から先進医療として導入される「遺伝子パネル検査」について書かれたところでは、

遺伝子の異常一個だけでがんになるのは稀で、ほとんどの場合は複数の異常の組み合わせで起きており、未知の組み合わせが数え切れないほど残されていると考えられます。

さらに、がん細胞の遺伝子異常は、同じ患者の腫瘍の中でさえも多様であり、しかも抗がん剤を投与すると遺伝子異常の数も種類も異なってきます。歳月とともに多様性が増えていくのです。

「遺伝子パネル検査」は既に知られている異常だけを調べるもので、免疫を上手に使うことにも役立ちません。(一部加筆修正)

現状の「遺伝子パネル検査」に疑問を提起しています。がん研有明病院が11の先進医療施設として認められなかったこともあるのかもしれません。

がん細胞の遺伝子異常は、時間とともに変化するのですから、治療を行おうとする時点で、どのような異常があるのかを把握しないことには、効果的な治療はできません。そのためには、血液や尿から遺伝子異常を見つけることのできる「リキッド・バイオプシー」が実用化されなければなりません。

最新の放射線治療

ガンマナイフやサイバーナイフ、粒子線治療の紹介をしていますが、なかでも密封小線源治療にも触れられているのは、近年ではめずらしいです。密封小線源は、舌がんなどに使えば効果的なのですが、病院経営上の理由から、残念ながらあまり使われなくなっています。

骨転移や局所進行がんでは、正常組織の中にがん細胞が侵み込むように入り込んでいるので、境界がはっきりしません。中心部の明かに腫瘍と分かる部分にはピンポイントで照射して、周辺の入り交じっている部分には、正常細胞は照射に耐えて回復できるが、がん細胞は回復できない線量を何回にも分けて照射する必要があります。

これを得意とするのが強度変調放射線治療(IMRT)です。

放射線治療によってがん細胞が破壊されると、破壊されたがん細胞と同じ目印を持ったがんを攻撃できる免疫細胞が増えてきます。その結果、遠隔転移した腫瘍が縮小することがあります。(アブスコパル効果)

アブスコパル効果は免疫チェックポイント阻害薬との相性が良く、世界中で臨床研究が進んでいます。

がん性悪疫質、口腔ケア

がん性悪疫質や口腔ケアの重要性も丁寧に説明されています。

慢性炎症が起きると、体脂肪や筋肉を分解して体重がどんどん減っていきます。倦怠感や疲れやすさだけでなく、がん細胞の転移や成長を促進し、抗がん剤も効きにくくなります。その結果生存期間が短くなるのです。その意味では、がん患者はがんで死ぬのではなく餓死するのです。

がん性悪疫質への対処法は、オメガ-3脂肪酸を充分に摂ることですが、イワシなら4匹、クロマグロなら600gも毎日食べなくてはなりません。これは難しい注文です。したがって、この本では積極的にEPA/DHAなどのサプリメントを摂ることを進めています。

がん患者の口腔ケアの重要性はあまり認識されていないように思います。抗がん剤による口内炎などの副作用対策のためにも、「がんと告知されたら歯科医へ」と言われています。


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