ステージ4からの眺め「膵臓がん完治への闘い」

このところ水虫治療薬で抗がん剤の効果を高めるという記事を続けていますが、その第3弾です。

今日の毎日新聞に掲載された、三輪晴美記者の久しぶりの連載記事です。三輪記者は、ご自身も乳がんのステージ4の患者です。

兵庫県川西市の副市長だった水田賢一さんが膵臓がんと診断されたのは2011年8月。手術はできるといわれ開腹したが、腹膜播種があってできませんでした。

知り合いの医師から紹介されたのが、抗がん剤の耐性を除く治療をしていた園田医師でした。抗がん剤の耐性を解除する治療法については、ここ何回かのブログで連続して取りあげてきましたので、そちらの記事を参照してください。

水田さんは、抗がん剤と併用した治療を3カ月半続けて退院します。検査の結果、膵尾部の腫瘍は縮小して、腹膜の腫瘍も画像上消えていたので、翌年1月に手術ができました。

ステージ4膵臓がん患者の余命は通常、中央値(データ全体の真ん中の数値)が12カ月に満たないが、同病院で手術に至った患者は29カ月だ。さらに治療開始から5年以上経過している患者が水田さんを含めて現在4人。

と紹介されています。水田さんは、診断後7年半が経ちますが、現在も元気でいます。

その元になったデータがこれでしょうか。(明和病院のサイトから)ただ、生存期間中央値は、下のグラフでは20.2ヵ月となっており、記事とは異なっています。

ITCZとは、イトラコナゾール, 抗真菌剤。抗真菌剤で、真菌の細胞膜合成を阻害し、抗真菌作用を示します。
通常、真菌血症・呼吸器真菌症などの内臓真菌症(深在性真菌症)、深在性皮膚真菌症、白癬・カンジタ症などの表在性皮膚真菌症、爪白癬の治療に用いられます。

とされています。いわば「水虫の治療薬」です。この薬が、がん細胞が、細胞膜錠にあるP-糖タンパク質を利用して抗がん剤を排出する作用を阻害すると期待されています。ただ、P-糖タンパク質は正常な細胞にもあるし、血液脳関門の毛細血管内皮細胞等に発現しているので、どのような副作用が生じるのかも懸念されます。

上のグラフを見ると、イトラコナゾール+アブラキサン+GEMの患者数は32人と少ないですね。かたやアブラキサン+GEMの患者数は431人と差があります。

FIT393さんがコメントで指摘されていますが、このグラフの元となった論文がNEMJ誌に掲載されています。(nab-パクリタキセル+ゲムシタビンによる膵癌生存率の増加)そこにあるグラフをベースにして、ITCZ+nabパクリタキセル+GEMの生存率曲線を付け加えたものになっているようです。

当然患者の背景も違ってくると思われますが、その点を考慮してあるのかどうか、定かではありません。

さらに言えば、ITCZ併用治療の患者32人のうち、離脱もしくは追跡不能の患者が16人と半数に昇っていることでグラフが上に膨らんでいる可能性があります。

また、治療開始後6ヵ月目まで一人も亡くなっていないということも気になります。比較的元気な患者を集めたのかもしれません。

患者の背景が統一されているのか、重篤な副作用などの有害事象がどの程度あったのかも分かりません。ま、臨床試験の論文ではないから致し方ないですね。

標準治療やガイダンスから外れていますが、臨床試験として行っているのですから、倫理的には問題ないと思います。

標準治療でない治療を受ける際は、細心の注意が必要だ。「治りたい」患者の気持ちにつけ込み、「ステージ4でもあきらめない」などと言って、効果の見込めない治療を高額で施す医療機関があるからだ。一方、目の前の患者の人生を思い、「できる限りのことはやる」という両医師のような治療もある。医師の熱意と努力で救われる命があるのだ。

私の考えでは、「希望は持てるが、本当に有効かどうかはまだ分からない」ということでしょうか。しかし、ステージ4の膵臓がん患者にとっては希望の持てる記事です。難治がんに対して、こうしたチャレンジは続けて欲しいものです。

この夏ごろには、水田賢一氏が文芸社から闘病記を自費出版されるそうです。


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ステージ4からの眺め「膵臓がん完治への闘い」” に対して2件のコメントがあります。

  1. FIT393 より:

    Von Hoff DD, et al. Increased survival in pancreatic cancer with nab-paclitaxel plus gemcitabine. N Engl J Med.369(18):1691-703, 2013
    この発表のグラフの引用でしょうね。

    1. キノシタ より:

      なるほど、そっくりですね。自分ところのデータじゃないってことか。

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