今日の一冊(160) 岡田晴恵『秘闘―私の「コロナ戦争」全記録―』

一気に読み終わった。

秘闘―私の「コロナ戦争」全記録―

秘闘―私の「コロナ戦争」全記録―

岡田晴恵
1,584円(03/28 22:03時点)
発売日: 2021/12/22
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帯に林真理子氏が「あのときこんな会話がなされていたのだ、こんな駆け引きが。こんな過ちが。初めて知る真実に戦慄する!」と書いている。同じ感激を私も持った。

第2波の時、こんなこともあった。ある保育園で感染者が出て、お母さんが1歳と3歳の子供を連れて来院した。濃厚接触者ではないため自費でしか検査が受けられず、5万円もかけて検査を受けて頂かなければならなかった。とても理不尽で、患者さんのことを思うとこちらも申し訳なく、いやな経験でしかなかった。なぜすぐPCR検査ができないのか、実効性のあるコロナ対策が進まないのか、臨床現場にいる私は本来、現場でやらなければいけないことができずに、ずっと忸怩たる思いでいた。

その答えが、本書にはあった。日本でPCR検査を抑制した理由として専門家らの発言を検証しながら、「厚労省と専門家会議の確固たる意志」があったとし、早期発見・早期治療を早い段階で放棄していたことを指摘している。
また、「検査拡大に反対する」ために厚労省が内部文書を作成し、「官僚や国会議員などにネガティブ・キャンペーンを行って」いたことも明かされており、目を疑うほどだった。

同時に私は、批判的な意見もここまで言ってしまっていいものなのか、とちょっと驚いた。政府の感染症専門家たちが科学的視点からではなく、「政治的」に動いてきたことは、特に厳しく追及している。

amazon 出版社のコメントより

日本のコロナ対策の舞台裏を描いた告白手記。コロナ対策の失敗を後世に残すべき貴重な記録。

尾身茂氏や川崎市健康安全研究所所長 岡部信彦氏の名前が実名で出てくる。ここまで書いていいんかなと思うくらい。しかし、記録魔の彼女らしく、やり取りも鮮明に書かれている。

こんなくだりがある。

「岡田さん、ADEって何? 僕はそんな細かなことはわかんない、知らないよ」と、尾身氏の言葉には、私も驚いた。

ADE「抗体依存性感染増強」は最先端の感染症用語である。それを知らない人物が感染症対策を助言する委員会ののトップにおさまっている。

驚きを通り越して寒気がした。専門的な知識にも欠けている、サイエンスがない、現場を知らない、臨床経験がない。ないない尽くしの”専門家”がコロナ対策の行方を決定している。

実際にコロナ対策の実権を握り総理大臣に直伝しているのは岡部信彦氏である。しかし彼は都合が悪くなると表に出てこない。代役を尾身茂氏に押し付けている。

そのような舞台裏の実情が赤裸々に書かれている。

「ディリューションミュータント」これは初めて聞く用語だ。

「今回の変異ウイルスは、中和抗体ができると、その中和エピトープを遺伝子ごと消すんですよ。中和エピトープが消えてなくなる。だから抗体が効かない。こんなことをやってのけるウイルスだっていうことです。「遺伝子ごと消すのだ」と、田代眞人氏の説明がある。

巧妙に免疫を回避する能力をつけているのが新型コロナである。この本が書かれた時はまだオミクロン株は優勢にはなっていない。今後もっと強力な新型コロナの株が出てくるはずだ。ワクチンだけの一本足打法では対処できない。

新型インフルエンザへの脅威も語られている。どういうことかと言うと、コロナ禍でこの2年インフルエンザの流行がなかった。つまり国民にインフルエンザに対する免疫力、抵抗力が弱っているはずだ。

この状態でコロナが終息した後により強力な新型インフルエンザの流行が始まるのではないか、あるいは新型コロナと新型インフルエンザのダブルパンチが来るかもしれない。最悪の事態を想定するとそうなる。

元田村厚生労働大臣の「僕が生きている間はマスクは外せないと思う」にも、もうコロナ前には戻れないのだと変に納得した。

世界は変わる

人類の歴史は感染症との闘いの歴史でもある。カミュの『ペスト』に書かれているように、中世のペストの大流行があった。

ペストによってカトリック教会の権威は没落し、宗教改革につながった。そしてヨーロッパの封建制が壊れた。

中世という時代を終わらせるほどの力があった。

スペイン風邪ではドイツやオーストリアを含めた帝国主義が潰れた。イギリスはかろうじて生き残ったが、世界の主導権はアメリカに移った。

今回のコロナ禍によって世界の覇権も変わっていくのではないか。

自由主義よりも中国のような一党独裁政権の方がコロナに対する対応が早い。そのような中国へ追随するアフリカ諸国などが出てきている。

ロシアとアメリカが争っているウクライナ問題も、コロナ後の世界の覇権の有り様という観点から見ると、別の見方ができるのではないだろうか。

いずれにしろコロナ禍がいつ収束するのか、あるいはずっと続くのかわからないが、一つ確実に言えることは、

もうコロナの前には戻ることはできない

ということだ。


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