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中村祐輔先生の講演 がんペプチドワクチン

昨夜は国立がんセンターで行われた講演会に参加。「がん標準治療『後』を考える」とのテーマで、特別講演としてがんペプチドワクチンの開発者である東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔 先生が「がんペプチドワクチン療法 希望から失望、そして大飛躍への期待」と題して講演した。私もこの特別講演が目当てで参加したのだが、150人収容できる大会議室が満席で補助いすや立ち見の参加者が多数出るほどの盛況でした。マスコミの取材もあり、カメラが回っていましたからどこかで放映されるのでしょう。

驚いたのは、いきなり右のような本の表紙をプロジェクターで投影して、がん難民―なる前に読む、なってから読む処方箋 (医学最先端シリーズ)「今の標準治療によってがん難民が増えている、ということでこのような書籍も出版され、マスコミでも放映されている。私がこのドワクチンを開発しようとした動機も、標準治療では救えない、再発後はいくつかの抗がん剤が効かなくなると『後はホスピスですね』と言われがん難民になっていく。こうした状況を何とかしたいということだったのです。」と話し始められた。

がんの標準治療を押し進めてきた本丸である国立がんセンターの院長始めそうそうたる先生方が参加している場で、こんなことを言って大丈夫かと、人ごとながら心配になってきた。

中村祐輔先生の発言を私なりに要約すると、

エビデンスに基づく治療ということを、勘違いをしているのではないか。エビデンスは統計だと勘違いしている。たくさんの患者に同じ治療をしてその結果を統計的に処理しなければエビデンスではない、このような考えは違うのでないか。たった一人の症例でも、どうしてガンが消失したのか、あるいは逆にどうして効かなかったのかを考えることもエビデンスである。エビデンス・エビデンスと言っていると患者が見えなくなる。患者を診ないでがんを見ているから、患者はがん難民となっていくのではないか。

今までの免疫療法あるいはワクチン療法が効かなかったのは、がん細胞の数に比べて圧倒的にワクチンの数が少なすぎたためであろう。一人の警官が5万人のやくざを相手に戦争をするようなものであった。これでは追っつかない。がんペプチドワクチン療法では人体にある60兆個の細胞の10ないし100倍の数のワクチン分子を注入することで効果を上げようとしている。

本当に免疫力が高まってがんに対して効果があると言える状態になっているならば、免疫力が異常に高くなり、自己免疫疾患が発生しても良いはずである。そうならないのはまだまだ免疫力が足りないということだろう。ただ、現状ではがんペプチドワクチンを投与しても40%の患者には効果がない。しかし20%は腫瘍の縮小が見られる。

このような内容でした。このワクチン療法も『魔法の弾丸』ではないし、これからの研究を待つべき薬のようです。

国立がんセンターの治療開発部長 藤原康弘先生が反対の立場から発言し、「第二の丸山ワクチンとならないことを祈ります」と、こちらも辛辣な発表でした。

現場の医師の立場から、JR東京総合病院血液・リウマチ科主任医長 小林一彦 先生は、「現場では明日どうしようか、ということが頭の中を占めていて、標準治療という言葉は浮かんでこない。」と発表し、ある乳がん患者の例を挙げていました。

患者のがんの進展に合わせていろいろな抗がん剤をとっかえひっかえ使ってきた。その結果10年近く生存しているが、この患者の場合、どこまでが標準治療でしょうか、そのような線引きはできないでしょう、という発言。

○○がんには、これとこれの抗がん剤、それが効かなくなれば、おしまい。こうした考えの医者には標準治療とは、マニュアル通りに治療をしていればよいバイブルでしょう。しかし、患者の立場で「さぁ困った、次は、明日はどんな治療戦略でいこうか」とまじめに悩む現場の医師には、標準治療はすでにやり尽くしていて、後はどうしようか、という切実な思いがあるのです。

がんペプチドワクチンは本来なら再発予防に効果があるはずですが、これのエビデンスを得ることは容易ではない。日本の現状では進行がんに対してのエビデンスを確立することが求められているからです。ASCO2008では、ワクチンに対するエビデンスのあり方を、これまでの抗がん剤とは違う考えをするべきだという発言もあったようです。


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中村祐輔先生の講演 がんペプチドワクチン” に対して2件のコメントがあります。

  1. 渡辺 より:

    お元気なご様子、なによりです。
    以前うかがっていたメールアドレスは変えられたようですね。
    差し支えなければお知らせください。

  2. りぶ より:

    とても勉強になるブログ記事でした。
    有難う御座います。

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