徳州会新聞『がんペプチドワクチン実用化に向け新局面へ』

徳州会新聞6.11付から、がんペプチドワクチンの記事を紹介します。

千葉徳洲会病院 がんペプチドワクチン実用化に向け新局面へ

千葉徳洲会病院が進めている膵がんを対象とする"がんペプチドワクチン"の研究プロジェクトが、新たな段階を迎えている。これまでの第I・II相臨床研究では、31症例中9例で、完治または腫瘍の縮小が見られたことから、膵がんに対する有力なワクチン候補になると期待が高まっている。また一歩、ペプチドワクチン療法が実用化に向け大きく前進しそうだ。

膵がん患者さんに大きな福音

千葉徳洲会病院は2009年3月から浅原新吾副院長が中心となり、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターとともに、膵がんに対するペプチドワクチン療法の有効性や安全性などを検討する第Ⅰ・Ⅱ相臨床研究を行ってきた。
2年間にわたる研究の結果、被験者の平均生存期間の延長、腫瘍の縮小効果が確認された。
また副作用もほとんどなかったことから、臨床研究で用いたがんペプチドワクチンを、「膵がんに対するワクチン候補として最も有力」と判断。実現に向けて次のステップへと進むこととなった。
研究を進めているワクチンは、「HLA─A24」という白血球の型を持つ患者さんに対して治療効果を期待できるもの。日本人の約6割がこの型を持つとされる。またこのワクチンは、がん細胞の増殖などに重要な役割を果たしていると考えられている「KIF20A」というペプチド(囲み記事参照)からできている。

今後2年間で、千葉徳洲会病院を含む全国約40施設において、合計300症例を目安に、治療効果や安全性などを検討していく。

第I・II相臨床研究は、高度進行がん、または術後再発膵がんのうち、標準療法が無効であるか、副作用が原因で治療の継続が困難になった31症例を対象に実施した。

ペプチドワクチンを投与した評価可能な29人の結果をまとめたところ、1人が完治し、8人に腫瘍の縮小が見られた。

治療効果を判定する基準では、腫瘍が20%以上小さくなると「縮小」とみなされる。この8人は同基準に達しなかったものの、20%未満の縮小が確認された。このほか10人は大きさが変化せず、もう10人は悪化した。

治療効果のあった症例の割合を示す病勢制御率は65.5%で、大きな副作用はほとんどなかった。

浅原副院長は、「がんは通常、何も治療を施さなければ大きくなります。20%未満とはいえ縮小が見られたということは、効果が出ているということです」と成果を強調する。

がんペプチドワクチンを投与した群と、ワクチンの臨床研究以前に標準療法が無効となった群の平均生存期間(中央値)を比較すると、前者は4・7カ月、後者は2・8カ月とおよそ2カ月の差がでた(グラフ参照)。

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浅原副院長はこの結果に注目し、「臨床研究では余命が3カ月から半年の患者さんが対象でした。化学療法など手を尽くした後の余命数カ月の方々の生存期間が、このワクチンだけで2カ月延びたことは特筆すべきことです」と解説する。

実際にワクチンが薬事承認され、公的医療保険が適用された場合、膵がんは再発が多いため、手術後の予防的投与や、抗がん剤との併用などの使い方が考えられるという。「発見が遅くて手術もできず、他の標準療法でも治療効果が見込めない患者さんに福音がもたらされる可能性があります」(浅原副院長)

ワクチン実用化に向け、新たな段階を迎えた研究に、全国から熱い視線が寄せられそうだ。


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