メラトニンについて(3)

メラトニンについては前回で終わるつもりだったのですが、「米国統合医療ノート」にメラトニンに関する記事があったので紹介します。

メラトニンとがん治療

このブログでは、文献データを見る限りは、現状でがん治療と併用してサプリメントを摂るのなら、メラトニンが第一推薦だろうと書かれています。論文として発表されたデータを元にして、数字で客観的に評価をされています。説得力があります。 こちら と こちら

もしもがん治療と同時並行して何らかの抗酸化サプリメントを服用するのなら、現時点ではメラトニンを第一推薦にすべきではないかと思います。

メラトニンは脳の松果体(図)から分泌される睡眠を司るホルモンとして知られていますが、このところがんとの関連が注目されています。検索すると、高名なテキサス大のMDアンダーソンがんセンターやスタンフォード大が、メラトニンを用いたがんの臨床試験をいま何件も平行して進めています。

このブログはアメリカ在住でAnzai & Associates 代表 安西英雄氏のものですが、アメリカにおける統合医療(補完代替医療と通常医療の統合)、サプリメントの状況に非常に詳しいようで、示唆に富んだ記事がたくさんあり、たいへん勉強になります。

抗がんサプリメントの効果と副作用徹底検証!

メラトニンに関しては、キャンサーネット・ジャパンが三省堂から出版して
いる『抗がんサプリメントの効果と副作用 徹底検証』にも記載されています。

こちらは安西氏とは違って否定的な印象です。一般に公的な機関の出すものは、はっきりとした科学的なエビデンスがない限りはサプリメントを勧めるはずがありませんから、当然このような書き方になってしまいますね。

メラトニン
「俗に期待されている効能」 免疫力を高め、抗がん作用があると考えられている。

「科学的に検証すると・・・」 がん患者を対象とした複数の臨床試験があり、その中には興味深いデータもあります。

「副作用と禁忌」 安全性については十分なデータがありません。副作用についても明らかではありません。

動物実験や試験管内の実験では、がん細胞に対する増殖抑制効果を示すことが確認されています。メラトニンは,まともに議論するに足る健康食品の一つだと言えるでしょう。しかし、現状ではがんへの有効性を示す臨床試験やエビデンスの数、質は十分とは言えず、現段階で無条件に「がんの治療や予防に有効」という結論を引き出すには無理があると思われます。

この本を読んでサプリメントを選ぼうと考えている読者はがっかりすることでしょう。なぜなら「科学的検証」というくくりで、ほとんどすべてのサプリメントが切り捨てられていますから、厳密に安全や効用を証明されたものを選ぼうとしても、この本からはそのようなサプリメントを選び出すことは難しいからです。

メラトニンに「安全性については十分なデータがない」といわれても、特許の取れないものに対して企業が積極的にデータを取るはずがないことは既に書きました。10年以上もアメリカでは大量に服用されており、FDAにも重大な副作用が報告されていないということは、これが、安全性のデータだと言えないでしょうか。サプリメントに対して、医薬品と同じようなエビデンスを求めることに問題があるように思われます。

抗がん剤の有効性を証明するのに、二重盲検法による統計的な手法がどうして必要なのか、考えてみてください。ある事象について統計的な手法を使って説得しなければならないということは、その事象が統計的な手法を使わなければならないほど不確かだからだ、ということなのです。ある抗がん剤が、誰が見てもすべての患者のがんに有効だということであれば、統計的な手法を使って説得する必要などはないのです。効果があるのかないのか一見して分からない。あるにしても、ごくわずかの違いしかないから統計的に処理せざるを得ないのです。心臓冠動脈のバイパス手術にはエビデンスはありません。しかし、手術しなければ死んでしまう患者が大勢いたから適用されてきたのです。また、FDAは、「CT検査に関しては、何らの有効性を証明するデータは持ち合わせていない」と言っています。6月は雨が多く降るということを統計的に証明する必要はありません。経験的にみんなが知っているのです。

サプリメントに対して抗がん剤と同じようなエビデンスを要求することは、愚かなことです。安全で、ある程度科学的に効用が期待でき、高額でなければ、「何もしないでいることは不安だ」というがん患者は使ってみればよいのだと思います。ダメモトでよいのです。

今話題のがんペプチドワクチンにしても、中村祐輔教授などは、「このワクチンに対して抗がん剤と同じようなエビデンスを要求することはできない。エビデンスの考え方を変えなくてはならない」という趣旨の発言をしています。

決してメラトニンを勧めているわけではありません。私が調査し、考え、今の時点で思っていることを書いているだけです。書かれた内容についても、素人の判断ですから鵜呑みにしないでください。


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メラトニンについて(3)” に対して6件のコメントがあります。

  1. 安西英雄 より:

    キノシタ様
    誤解を招きやすい表記をしてもうしわけありません。訂正いたしました。

  2. キノシタ より:

    安西様。
    ごらんいただいて恐縮です。ブログは私にとって大変役立っています。日本の公的な情報ではサプリメントは何とか摂らせないようにしているようです。そんな中で安西さんのブログは、がん患者にとっては一つの「希望」です。
    リンクと引用の件、ブログから「About Us」をクリックすると、「本サイト内の文章・図表などの転載は、原則としてお断りします。リンクは自由ですが、ぜひご一報ください。」とありましたので、引用もまずいのかと思っていました。これはブログのことではなくAnzai & AssociatesのWebの事なのですね。
    お言葉に甘えまして、記載を変更しました。今後もよろしくお願いします。
    安西さんのブログは、ぜひ書籍にして出版してください。多くの日本人が喜ぶに違いありません。

  3. 安西英雄 より:

    「米国統合医療ノート」の安西です。ご紹介頂きありがとうございました。たいへん充実したブログでいろいろ勉強になりました。また参考にさせて頂きます。
    なお私どものほうは『リンク・引用・転載は自由です』としておりますので、必要な場合はどうぞご引用ください。

  4. tuda より:

    ありがとうございます。
    とりあえず、医師に相談してみます。
    うつとの関連性がどういうものなのかくらいは答えてもらおうと思います。

  5. キノシタ より:

    tudaさん。
    私は全くの素人ですから、メラトニンに関して何らアドバイスをする立場ではございません。服用するもしないも自己責任でお願いします。
    ・メラトニンは海外から個人輸入するしか入手方法はありません。アメリカではFDAの承認が必要とされていない薬ですから、信頼できるメーカー品を選ぶべきでしょう。FDAの基準よりも厳しい基準で製造しているとうたっているメーカーもあります。
    ・うつ病との関係は「健康食品の安全性・有効性情報」に書かれている以上の知識は持ち合わせていません。
    https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail744lite.html
    主治医に相談した方がよろしいでしょうが、サプリメントに詳しい医師は少ないでしょうから、多分やめておいた方が良いといわれるのではないでしょうか。医者は「知らない」というよりは、勧めない方が責任を取らされることがないからです。
    後はメリットとデメリットを自分で調べて判断してください。

  6. tuda より:

    はじめまして。私の母は肺がんで現在イレッサで治療中です。
    メラトニンのこと、たいへん興味を持ちました。
    ネットで検索してみたところ、いろんなメーカーから出ているようですが、信頼できないメーカーとかもあるのでしょうか?
    また、商品説明に「うつ病の人は医師と相談してみて下さい」などと書かれていましたが、これはどういうことなのでしょうか?
    一応、私の母も抗うつ剤を処方されているので気になるところです。

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