オーケストラ!

ゴールデンウィークは毎年遠くに出かけるのは諦めている。千円渋滞が余計に出かける気をそぐ。

だから、映画『オーケストラ!』を観315x210に行った。毎月1日は「映画の日」
で入場料は1000円である。もっとも60歳以上はいつでも千円だから、敢えて一日に行くこともないのだが、天気も良いし風もさわやかだし、出かけることにした。

ルーマニア出身のラジュ・ミヘイレアニュのフランス映画。アンドレイはボリショイ交響楽団の元主席指揮者であるが、今はボリショイ劇場の清掃員である。ブレジネフ政権時代のユダヤ人排斥のあおりを受けて、彼の育てた楽団員とともに楽団を追われた。30年前に、コンサートでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏中にKGBが「公演中止」を叫んで彼の指揮棒を折る。そのときのヴァイオリニストは西側のマスコミのインタビューを受けたことが反国家的犯罪だとしてシベリア送りになる。死を覚悟した彼女は、生まれたばかりの女の赤ん坊を、チェリストのサーシャとアンドレイに頼んでチェロケースに入れてフランスに逃す。

劇場監督の部屋を清掃中のアンドレイは一枚のファックスを偶然見る。パリのシャトレ座からの緊急の公演依頼である。アンドレイは、昔の仲間を集めてニセの楽団を結成してフランスで公演することを思いつく。30年前に楽団を追われた彼らは、救急車の運転手、市場の商人、エロ映画の制作などをしているが、彼らを説得して、ニセのボリショイ交響楽団としてフランス行きを企てる。

交渉を引き受けたのが、彼を首にした人物というのもおもしろいが、彼は彼で、フランスの共産党大会で演説をするという「夢」を抱いている。

前半はドタバタ風で、パリにやってきた元楽団員はOrchestra2公演などそっちのけで、買い物や観光に夢中。リハーサルもすっぽかす始末である。しかし、アンドレイの指名した世界的名ヴァイオリニスト、
アンヌ・マリーが、実は30年前に彼らが逃がしてやった赤ん坊だと知り、すっぽかすつもりの公演に集まってくる。ここまでははらはらどきどきの連続である。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も、出だしは音がばらばらで聴いていられないくらい。しかし、徐々に30年前の中断された公演を思い出すかのように(何しろシベリア送りの女性ヴァイオリニストの娘が演奏しているのだから)、オーケストラと独奏ヴァイオリンの息があってくる。最後の15分は圧巻である。カメラはヴァイオリニストの左手のアップ、指揮者の顔、ヴァイオリニストと指揮者の目配せを交互に追う。ソリストとオケの息が合ってくる。ハーモニーが珠玉の音となって跳ぶ。映画の中の聴衆も、映画を見ている観客もぐいぐいと引き込まれていく。第3楽章のフィナーレ、怒濤のようなオケと、それに煽られるように高揚していくヴァイオリンが、指揮者の最後の一振りで最後にきっぱりと閉じられる。

演奏が終わったアンヌ・マリーは感極まって指揮者に寄り添うようにして涙まで流している。見ている私も、この演奏にはほんとうに感動してしまった。映像の魔力というか、CDで聴いているだけではこんなに感動することはないに違いない。

すばらしい映画であり、深い感動を与えてくれる演奏でした。


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