ニンジンジュース、ゲルソン療法で膵臓がんは治るのか?
先日のZoomを使った Web 交流会でも話題になりましたが、ゲルソン療法はやはりがん患者には気になる食事療法のようです。
小林麻央さんも飲んでいたと言うし、町の本屋に行くと済陽高穂の本が真っ先に目に着きますからね。
どうして100冊もの本が必要なのか
しかしここで考えて欲しいのは、済陽式ゲルソン療法だけで、膵臓がんが完全に治った患者はどれほどいるのかということです。済陽高穂の本に紹介されているのでしょうか。彼の本には、改善したとか効果があったという記述はありますが、膵臓がんが消えた、寛解したという例は書かれていないように思います。
私の手元には2008年に出版された『今あるガンが消えていく食事』というタイトルの本があります。それも含めて、済陽高穂の本をアマゾンで検索すると110冊以上にもなります。
ゲルソン療法、ニンジン療法、こうした一つのテーマで100冊以上の本を書くというのは異常だと思いませんか。良い本なら一冊書けば長く売れるものです。
つまり、100冊以上の同じテーマで書くのは、別の意図があると考えて良いでしょう。
これほど長年治療を続けていて、成果があるのなら論文として出せば、名声も富もえることができるでしょう。それをしないのは、なぜかと考えてください。
彼らにとって、がん患者は「いいカモ」なのです。
実は私も低速ジューサーを買って、一度だけ彼の提唱するジュースを作ってみました。コップ一杯だけ飲んでこれは無理だと諦めました。悪寒はするし下痢はする。こんなもの1日に何リットルも飲める人が本当にいるのだろうかと感じました。(いるのでしょうね)
ニンジンジュースで治る?
「ニンジンジュースでがんが治った」という例があったとしても、そういう方の腸内には特殊な細菌が住みついているのでしょう。
牛などの草食動物は、体内に草からアミノ酸を合成できる微生物が住み着いています。草を食べて筋肉隆々になっているわけではなくて、草を消化して蛋白質に変えた細菌を食べているというのです。
『哺乳類誕生 乳の獲得と進化の謎』で酒井仙吉氏が解説されています。
ウシは唾液と第一胃に尿素を分泌する。微生物は尿素と、胃で発生するアンモニアからアミノ酸をつくる。これも非反芻動物には不可能である。草のタンパク質は微生物に利用されてしまうが不利にならない。微生物が第四胃に送られると胃酸で死滅、タンパク質消化酵素で分解され、小腸でアミノ酸となって吸収されるからである。タンパク質は草に含まれていた一〇~一〇〇倍に増加し、量的に不足することはない。微生物も動物であり、必須アミノ酸が欠乏することもない。また、各種ビタミンも微生物から得ている。口にした栄養はみかけで、第四胃に到着した栄養が本物である。(166ページ)
牛は草ばかり食べていると思っていたら、実は、しっかりと動物性タンパク質を補給しているのです。
牛と同じ微生物を腸内に持っている人も稀にいるようです。そういう方は大量のニンジンジュースだけを飲んでいても、蛋白質を補給できるのでしょう。(仮説です)
随分昔に、済陽式ゲルソン療法についてはこんな記事も書いています。彼のクリニックがどういう経緯で開業したのなど、面白い情報です。
膵臓がんにはゲルソン療法は絶対ダメ!
ゲルソンの娘であり、シュバイツアー博士の主治医でもあったシャルロッテ・ゲルソンの『決定版 ゲルソンがん食事療法』の12章には驚くようなことが書かれています。
どの程度であれ、また最後に受けた抗がん剤治療からどんなに時間が経っていようとも、化学療法を受けたことのある患者が、基本のゲルソン療法のまま忠実に実行することは大変危険である。
「基本のゲルソン療法のまま忠実に実行することは大変危険」なので、済陽式などの亜流が出てくるのでしょうか。バカ正直に受け取って、抗がん剤を拒否してゲルソン療法だけに賭ける患者も出てくるのです。
最後の段落にはこんな記述もあります。
膵臓がん患者で、以前に化学療法を受けたことがある場合には、残念ながらゲルソン療法でも良い結果が出せない。抗がん剤で膵臓があまりに激しく損傷を受けるからである。
膵臓がん患者がゲルソン療法で治りたければ、抗がん剤は一切止めなさいということですね。
がん患者の多くはがんで死んでいるのではない
「肉を食べない」食事を摂っている人は、彼の免疫システムにとっては「兵糧攻め」にあっているようなものです。
「四つ足の肉はがんを育てる」の根拠を示したものはありません。
がん細胞は栄養が取れなければ、炎症性サイトカインを放出してタンパク質の代謝を異常にして、筋肉などを溶かすようにして栄養を集めて大きくなるのです。
食べて栄養を摂らなければ、がん患者はあっという間に栄養障害になり、やせ細っていきます。がん患者の多くは感染症で亡くなるのです。
がんで入院しても、がんで亡くなる患者はたった2割です。8割の方は感染症で亡くなっています。なぜ感染症に罹るのか、それは栄養障害によって免疫機能が低下しているからです。
栄養素のバランスが崩れた結果、代謝障害が起き、身体機能に支障が出ます。免疫機能もそのひとつで、健康人なら問題のない弱い菌にすら感染して、回復できずに亡くなるのです。
著者らの調査によれば、余命一ヶ月のがん患者の82.4%は栄養障害に陥っていました。適切な栄養管理をしてもこれ以上よくならなかった患者はわずか17.6%でした。そして適切な栄養管理を受けた患者は、がんそのもので亡くなるのですが、その最期はとてもおだやかでした。
と書かれています。
「栄養を摂るとがん細胞が大きくなる」との考え方は、その栄養が私たちの身体から奪われているという事実を無視しているわけです。がん細胞よりも前に患者が死んでしまいます。
久留米大学がんワクチンセンター長の伊東恭悟先生も『がんを生きよう―あなたのT細胞が治療の主役です』で、次のように述べています。
がんと食べ物
- 「食事でがんが治ることはありません」しかし、適切な食事を摂れば、がん周囲の炎症が改善されるので、T細胞機能が復活してがんの増殖が抑えられる可能性が高くなります。
- がんを抑える食品
緑茶・キャベツ・生姜・ブロッコリー・ニンニク・大豆・ラズベリー・ブルーベリー・ブラックチョコレート・ターメリック - がんを育てる食品
精製糖・精白小麦粉・精白米など糖質の多い食品 - 野菜ジュースの大量摂取は体が冷えて血流が悪くなって体調不良の原因になり、T細胞の機能を阻害する。済陽式を信じている患者さんに伝えたいですな。
- 厳格すぎる食事療法は、かえってがんの再発の原因となることがある
- がんは炎症反応を利用して増殖するのだから、慢性炎症を引き起こさない食事が、がんの進行を遅らせる
- 糖分の過剰摂取を控え、精製食品とトランス脂肪酸を控え、運動と禁煙をする
- 精製食品を少なくし、運動をしてストレスを少なくすると核内因子カッパBという炎症遺伝子のスイッチを切ることができる
- 炎症を減らすハーブなど:緑茶・生姜・ターメリック・乳酸菌食品
しかし、
食事療法をしなければ、がんは治らない
押川先生の動画もあります。