【追記あり】「ホメオパシー」についての日本学術会議会長談話
マスコミでも報道されているとおり、日本学術会議会長の金澤一郎会長名で『「ホメオパシー」についての会長談話』が発表されました。全文はここ。 (日本学術会議のWebにあるPDFファイルではなく、当日記者団に配布された資料をアップしました。PowerPointの画像が追加されています)
タイムリーな談話として歓迎します。
- ホメオパシーが医療関係者の間で急速に広がり、ホメオパシー施療者養成学校までができています。
- レメディは「ただの水」ですから「副作用がない」ことはもちろんですが、治療効果もあるはずがありません。
- 「水が、かつて物質が存在したという記憶を持っているため」と説明しています。この主張には科学的な根拠がなく、荒唐無稽としか言いようがありません。
- その効果はプラセボ(偽薬)と同じ、すなわち心理的な効果であり、治療としての有効性がないことが科学的に証明されています。
- 例えプラセボとしても、医療関係者がホメオパシーを治療に使用することは認められません。
- 今のうちに医療・歯科医療・獣医療現場からこれを排除する努力が行われなければ「自然に近い安全で有効な治療」という誤解が広がり、欧米と同様の深刻な事態に陥ることが懸念されます。
- すべての関係者はホメオパシーのような非科学を排除して正しい科学を広める役割を果たさなくてはなりません。
- ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。
- ホメオパシーについて十分に理解した上で、自身のために使用することは個人の自由です。
会長談話という形をとっていますが、報道によると一年間内部で検討を重ねてきた結果だということですから、日本学術会議の総意と考えて良いでしょう。私のこれまでの主張とも一致しています。
長妻厚生労働大臣は平成21年1月28日の参議院予算委員会で次のように答弁して、ホメオパシーへの親和性を明らかにしています。学術会議が反対の談話を出した今、政府・長沼大臣はどうするのでしょうね。
○国務大臣(長妻昭君) 統合医療は、もう言うまでもなく、西洋医学だけではなくて、伝統医学、漢方、鍼灸、温泉療法、音楽療法、芸術療法、心身療法、自然療法、ハーブ療法、ホメオパチーなどいろいろな広がりがあるものでございまして、厚生労働省といたしましても、この二十二年度の予算でかなりこれまで以上に、研究分野の統合医療
の研究について十億円以上の予算を計上しまして、その効果も含めた研究というのに取り組んでいきたいというふうに考えております。(議事録では「ホメオパチー」となっている)
朝日新聞では「治療に導入している大学病院もある」と書かれていますが、これは東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックのことでしょう。ここの川島朗医師もホメオパシーの信奉者で、あちらこちらで発言しているようです。
【追記】
apitalに当日の会見の様子がアップされています。名指しではないですが長妻大臣の上の答弁についても注文を付けています。
会見資料では「日本の事情」として、日本ホメオパシー振興会(松永昌泰氏)、日本ホメオパシー医学協会(由井寅子氏)は挙げていますが、日本ホメオパシー医学会(帯津良一氏)は挙げられていません。どうしてか合点がいきませんね。唯一同じ医者仲間が理事長をやっている団体ということで遠慮したのかも。しかし、ホメオパシー医学会の方針をみると、会長談話とは真っ向から対立します。無視できないと思うのですが。
日本ホメオパシー医学会の方針
1) ホメオパシーは医療である。
2) ホメオパシーを行うにあたって、常に患者の利益を最優先する。
3) ホメオパシーを行うものは近代西洋医学を修めたものとして、自らの専門性の範囲の中で治療を行う。
4) ホメオパシーを行うものは近代西洋医学、補完・代替医療を問わず最適な医療を提供する。
5) ホメオパシーを行うものは最良の医療を提供するために、他の医療従事者と積極的に協力する。
「あの事故は本当のホメオパシーではなかったから起きたのだ」という主張が早速されています。由井氏は間違ったホメオパシーであり、我々のが正しいのだという論理です。松永氏のブログです。