抗がん剤で治るがんは、抗がん剤で治っているのか?

書きかけのこの記事を自動でアップして、しばらく気づかずにいました。3時間ほどですが、不思議に思われたかもしれません。改めてアップします。


近藤誠氏は「抗がん剤は効かない」と言い、梅澤医師は「うまく使えば抗がん剤は効く」と言う。そして、二人に共通しているのは、ある種のがんには抗がん剤は効くという点である。ある種のがんとは、近藤氏によれば「抗がん剤だけで治る成人がんは、急性白血病、悪性リンパ腫、睾丸のがん、子宮絨毛がんの四つ」であり、他には自然退縮が起こりやすいという小児の神経芽細胞腫があると言う。

固形がんが抗がん剤で治ることはないというのは専門家の共通認識であり、あるのは延命効果だけ。近藤氏はその延命効果もない、あるいはあるとは証明できないと主張する。かたや梅澤医師は、標準治療では延命効果どころか宿命効果があるだけと。しかし、患者の状態に応じた最小量の抗がん剤なら治ったもどきになることもある、と。

国立がん研究センター内科レジデント編集の『がん診療レジデントマニュアル』には「がん薬物療法の有効性」と題して、A~D群までの四つに分けて分類している。

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  • A群:抗がん剤単独で治癒が期待できる
  • B群:抗がん剤単独で治癒することは難しいが、大半の症例で延命が十分に期待できる
  • C群:抗がん剤単独で治癒は得られず、延命効果もB群に比べて劣る。症状緩和・生活の質(QOL)改善が重要な治療目標となる
  • D群:抗がん剤の効果は期待できない(小さい)

また、「がん情報サービス」の「がんの薬物療法」には「8.化学療法で治癒可能ながん」として次が挙げられている。

  1. 小児の急性リンパ性白血病
  2. 成人の急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病
  3. 悪性リンパ腫
  4. 精巣(睾丸)腫瘍
  5. 卵巣がん
  6. 絨毛性疾患(女性のがん)
  7. 小細胞肺がん(肺がん)

小細胞肺がん、ホジキン病の評価が違うが、概ね同じである。残念ながら膵癌はもっとも効果が期待できないがんの一つである。

A群のがんは、本当に抗がん剤で治っているのか?

A群または上の7つのがんが「抗がん剤単独で治るがん」とされており、これに異論を差し挟む人は少ないと思われるが、これらのがんは本当に抗がん剤で治っているのだろうか、と疑問に思う。A群のがんの多くに「自然治癒・自然緩解・自然退縮」あるいは「驚異的回復」と、さまざまな言い方があるが、そのような症例があるからだ。近藤誠氏は『抗がん剤は効かない』で「固形がんの中でも、睾丸のがんと子宮絨毛がんだけは、抗がん剤に延命がないどころか治す力まである(理由は不明)」と書いている。『あなたの癌は、がんもどき』では、小児神経芽細胞腫が「がんもどき」の例として挙げられており、「一歳未満の子どもに発見される神経芽細胞腫は、肝臓や骨髄に転移があっても、自然に縮小し、消失するものが少なくないという事実です(自然退縮)」と言っている。

けがや骨折で治療をしたとき手術や添え木をするが、では治るのは医療のおかげだろうか。それもと患者の自己治癒力で治るのだろうか。医療は治る手助けをするだけではないか、と考えたとき、がんと抗がん剤の関係にも同じことが言えるのではないだろうか。抗がん剤で治癒が期待できるがんも、放っておいても治るかもしれないのであり、抗がん剤はその手助け(あるいは逆に治癒の妨げになる)をするだけとも考えられないだろうか。

癌が消えた―驚くべき自己治癒力 (新潮文庫)』には「驚異的回復」の例としてこれらの癌が紹介されている。未分化型小細胞肺がんが消えてしまったロバート・ムーア氏。彼は80歳まで生きて交通事故で死亡したが、がんの痕跡は全くなくなっていた。生存期間は数ヶ月と言われる、びまん性大細胞リンパ腫が自然緩解したキャロル・ヌートソンの例。急性骨髄性白血病から驚異的に回復したエドワード・ペトレールの例。D群の「抗がん剤の効果が少ない」とされている膵臓がんで、手術不能の腺癌と診断された開業医のヒュー・フォークナーは診断から8年を生きて、再発によって亡くなった例。C群とされる小細胞肺がんやD群の黒色腫でもたびたび自然緩解例が報告されている。

エバーソンとコールの共著『ガンの自然退縮』には176例の自然退縮例が紹介されているが、それを検証したフランクリンは「そのうちの60パーセントは二年以上寛解状態が続き、十年以上続いた例も多い。同じ基準をホルモン療法や細胞に有害な化学療法と比べてみると、その快復率は自然緩解の発生率と大して変わりはない」と述べている。G・L・ローデンバーグ博士も次のような異端的見解を述べている。

部分的あるいは完全な自然緩解の発生を見るとき、新しい治療処置に非常に批判的にならざるを得ない。なぜなら、実際には治癒が、現在自分たちがまったく無視している自然の力によって引き起こされた結果であるにもかかわらず、その治療法に功績があったとされかねないからだ。

エバーソンとコールも、寛解がある種のがんに良く起こることに気づいていた。腎臓がん、小児の神経芽細胞腫、黒色腫、絨毛がんである。

A群のがんでは、これまで抗がん剤の効果だと思われていたものが、実際には退縮の自然過程の一部であったものが含まれている可能性がある。これらのがんには、突発的に治癒する遺伝子が組み込まれており、患者がある種のスイッチを押すことで治癒の過程が始まるのではないか。抗がん剤の効果で治癒したと言って良いのかどうか、多いに疑問である。


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