がんと栄養、カテキンについて

栄養とがんネスレ栄養科学会議が監修した『栄養とがん』という本があります。がんと免疫、がん患者の栄養療法など、今日の研究の到達点を専門的に解説したものです。多くはマウス実験や試験管レベルの研究成果ですが、がん患者として注目すべき内容も含まれています。

実は、この本の内容はほとんどネスレ栄養科学会議のサイトにアップされているものです。例えば「栄養科学レビュー」の「食とがん」には

  • 2008年12月     中島 泉(中部大学)
    がんと免疫
  • 2007年6月     矢ヶ崎 一三(東京農工大学)
    食品成分によるがん性高脂血症およびがん細胞特性の制御
    -細胞および動物モデル系における解析-
  • 2006年10月      大東 肇(京都大学)
    食や食成分によるがんの予防―現状と展望

などの論文があり、「学術シンポジウム」には「栄養とがん」とこの本のタイトルそのままの要旨が載っています。いくつかの内容を紹介すると、大東肇氏の「食や職制分によるがんの予防」では、

現在、化学発がんは、周知のようにイニシエーション-プロモーション-プログレッションの三段階に分けて考えられている。したがって、予防戦略としては、これら三段階のいずれかを阻害してやればいいことになる。特に化学的にこの抑制をなしとげようとする戦略(現在のところ、主としてイニシエーションまたはプロモーションの抑制)はがんの化学予防(cancer chemoprevention または単に chemoprevention)と呼ばれている。

筆者らもこれまで、主としてプロモーションの抑制を念頭に置いて、食素材のスクリーニングから、候補成分の単離・同定、動物実験、さらには作用機序の解析に至るまでの研究を展開してきた。

との観点から、プロモーションの抑制効果のある食品素材をあげています。

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「5.がん予防科学の現状と展望」では、次のように示唆に富む指摘がされています。

ここまで、がん予防における食への期待と学術的現状について記してきた。特に、食素材やその成分、さらには作用機序などについては、十分熟してきている。このような段階で、現在、がんの予防分野で問われている最も重要な課題は、これら素材や成分が真に“ヒトがん”に有効かどうかである。ヒトでの効果が実際に実証された例は極めて限られている。かつて、その当時としては最も期待の大きかったβ-カロテンで大規模な介入試験が種々実施されたことがある。結果は、一例は効果あり15)であったが、他方では逆の評価(または効果なし)16)が多く認められ、その後カロテノイドの介入試験はすべて中止された経緯がある。このような結果は、一方では関連研究者に大きな失望を与えたが、他方でchemoprevention 全般を見直す上で貴重な機会ともなった。すなわち、各種の予防性食因子を、どのような群にどのような量で与えるべきかを十分検討する必要があることを知らしめた機会となった。

最近、西野と神野らは、カロテノイドについて、C 型肝炎ウイルス由来肝硬変患者の肝細胞がん移行への抑制効果を5年間にわたって調べた。その結果、プラセボ群に比し、投与群では50%以上の抑制効果が認められるとの画期的な成果を報告した。17) この試験で重要であったと考えられる点は、対象を肝細胞がんの危険群に絞ったことと、用いたカロテノイドがリコペンを主に α- および β-カロテン(酸化を防ぐため、ビタミンEを配合)を混ぜた複合体であったことであろう。

がんをも含む生活習慣病全般の予防として、現在、一次から三次予防までが設定されている。一般的には、一次予防は健常な人達に対する予防を、二次予防は早期発見・早期治療であり、三次予防とは病気になった人達がそれ以上悪くならないよう、また生活の質が低下しないよう、適切な治療をすること、と理解していいであろう。理想である一次予防がどの程度具体化されるかは、その評価がいかになされるかなど、難しい課題である。したがって、現状では、危険群(一次予防の範疇ではあるが、前がん病変保持者など危険度の高い群)への有効性を確証してゆくことがまずは取られるべき道であると考えられる。また、単独成分の過剰投与の弊害が細胞レベルや動物実験レベルで明らかにされつつある昨今、複合カロテンを用いて良好な結果を得た点は、今後の応用を考えるうえで大きな示唆を与えたものと思われる。すなわち、単独成分の過剰摂取による副作用を、複合系によって抑える戦略である。現在、このようなトライアルが広く検討され始めている。

一時は大いに期待されたβ-カロテンは、いまでは逆に肺がんを増加させるという結果になっています。予防の観点からの大規模試験の結果ではそうであっても、危険群(現にがんに罹患している患者)では効果がある可能性までは否定できない、と考えられます。食のがん予防については、健康なヒトを対象とした大規模臨床試験も少ないが、がん患者を対象としたものは更に少ない、ほとんどないのです。

緑茶カテキンを例に、単一成分の摂りすぎには警鐘を鳴らしています。

緑茶カテキン・EGCG などでも動物実験レベルでがんを促進するとの報告もある。川西らは、ある種の抗酸化成分が条件によってはプロオキシダントにもなることを明らかにしている。先にも示したように、予防的観点からは、単独成分を過度に摂取することは薦められることではない。

矢ヶ崎一三氏の「食品成分によるがん性高脂血症およびがん細胞特性の制御」でもカテキンについて述べられています。

カテキン類の増殖抑制機構はアポトーシス誘導と細胞周期のG1アレストであり、これらは茶カテキン類をがん細胞に直接作用させても、経口投与後ラット血清をがん細胞に作用させても認められた。これらのことは、茶カテキン類が消化管から吸収され、活性を維持したまま血液中を循環し、標的がん細胞へ到達していることを意味している。なお、茶カテキン類は正常細胞にはアポトーシスを誘導しないことを確かめている。カテキン類の浸潤抑制機構は、抗酸化機能によることが認められている。すなわち、活性酸素種(ROS)は浸潤能を充進させるが、カテキン類をがん細胞に直接作用させても、茶抽出物やカテキン類を経口投与したラット血清をがん細胞に作用させても、ROS誘導性浸潤能充進は抑制された。

私の場合は、お茶ミルで挽いた深蒸し茶を、1日5~6杯飲んでいますが、この程度なら単一成分の摂りすぎにはならないと思われます。カテキンの増殖抑制、浸潤抑制機能を期待して、ほどほどに飲み続けます。

培養肝がん細胞を使った実験を報告しています。抗がん作用のあるといわれる食品成分の、がんの増殖と浸潤に対する効果を表にまとめています。がんの増殖抑制、浸潤抑制を区別した貴重な資料です。

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カロテノイドとクルクミン(ターメリック、ウコン)は増殖抑制には効果がないが浸潤は抑制するようです。

あくまでもマウス実験レベルの研究ですから、ヒトに対してそのまま適用できるとも限りません。しかし、それをいっていたら何もエビデンスがないことにもなります。

コーヒーには「新たな発がん抑制成分が発見されており・・・」と、インスタントコーヒーの抗がん作用に関する記述もありますが、ネスレの名を冠した研究会議ですから、紹介するのは控えておきます。

ま、バランスよく食べて、いくつかの食品・サプリメントで補強する。種と土壌の関係のように、がんを育てない体内環境を作るという考え方が大事ではないでしょうか。『がんに効く生活』を基本とした食習慣・生活習慣を継続することが大切です。

私のカテキン摂取ツールはこんなものです。↓

源宗園 楽天市場店の深蒸し茶が、苦みの中にも甘みがあり、コストパフォーマンスも優れています。錦富士が私の定番ですが、茜富士は更に美味しいです。他にも良いお茶はあるでしょうが、いろいろと試してこちらに落ち着いています。

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