がんと食事(1)
どのような食事をすべきかは、がん患者にとって切実な問題です。食事で治ることはあるのだろうか? 再発や転移の可能性を少しでも小さくするためには、どのような食事にすれば良いのだろうか?。いやいや、がんになった以上、何を食べようが同じなのか。
私が最初のがん(直腸がん)になったとき、手術後に主治医に「これからどのような食事をすれば良いでしょうか? 何か気をつけることはありますか?」と尋ねたのですが、先生は「何を食べても大して変わりません」という返事でした。シュレベールも同じような体験をして、しかし彼は「代替療法を無視するのは勿体ない」と、積極的に食生活を変えていきます。
私自身はいまも、シュレベールの『がんに効く生活』に書かれている玄米魚菜食あるいは地中海食に準じた食生活をしています。
この本のなかで、キャンベルの『The China Study』を引用した箇所がいくつかあります。
例えば「種と土壌」(p.176)では、
最初の小さな腫瘍が大きく成長していくために必要な条件が満たされないようにすれば、進展期の成長を抑えることが可能である。この段階ではさまざまな栄養素が大きな力を発揮する。ある栄養素はがんの成長を促進する(プロモータ)。また、ある栄養素は、がんの成長を抑制する(反プロモータ)。がんは、プロモータが反プロモータよりも多いときに増殖するのである。反プロモータが圧倒的に多ければ、がんの成長は抑制されるか、あるいは止まる。
まさにシーソーの原理である。この原理が極めて重要であることは、いくら強調してもしすぎることはない。「食物は、常に汚染物質に打ち勝つ」(p.198)
シュレベールに大きな影響を与えた『The China Study』は、アメリカではベストセラーになっており、クリントン元大統領もこの本を読んで食事を植物ベースに変えたそうです。そして体重が11kgも減量し、心臓病も改善したと、CNNのインタビューで語っています。(リンク)
『The China Study』は邦題『葬られた「第二のマクガバン報告」』で全3巻、下巻が2011年2月11日(3.11の一ヶ月前)に完訳となっています。私は3.11後の未曾有の混乱の最中でもあり、完訳に気がつきませんでした。
著者のT・コリン・キャンベル氏は、「栄養学分野のアインシュタイン」と言われるように、永年栄養学研究の第一線で活躍してきたコーネル大学名誉教授です。
1982年に全米科学アカデミー(の下部組織NRC)が公表した「食生活、栄養とがん」の委員であり、この報告書をまとめた委員のひとりです。この「食生活、栄養とがん」は、発表されると大きな反響を呼びました。また、牧畜団体などからもさまざまは妨害、反対を受けました。それはまるで1977年の「マクガバン報告」が公表されたときと同様でした。そしてこの報告書の内容はアメリカ政府の食事摂取指針に生かされることはありませんでした。この本の邦題はそのことを意識しています。
この本でのキャンベルの主張をごく簡単にまとめれば、
がんの原因は、肉と牛乳の摂取であり、「プラントベースでホールフードの食事(未精製の植物性食品)」はがんを予防し、再発と転移を防ぎ、ある種の大きくなった腫瘍にも有効である。
ということです。彼は肉だけではなく、魚・卵・牛乳・乳製品も健康に悪いと主張しています。