ニボルマブって幾らでしょうか?

前々回の記事で免疫チェックポイント阻害剤「ニボルマブ」の話題に触れましたが、この薬の薬価は幾らでしょうか?

承認された用法・用量は、通常、成人にはニボルマブとして1回2mg/kgを3週間間隔で点滴静注する。薬価は100mgが72万9849円、20mgが15万200円となった。

そうですから、体重が65kgの成人では、1回で2×65÷100×729,849円=948,804円。3週間間隔だから、1年を52週として年17回投与なら、

95万円×17回=1615万円/年

1回で95万円、年間で1600万円もの薬剤費がかかることになります。

「ニボルマブをお願いします」
「はい、検査費用も込みで100万円いただきます」

っていうことですよね。もちろんメラノーマの場合は健康保険ですから3割負担で、更に高額療養費制度を使えば患者の負担は、所得によって9万円から16万円ほどで済みます。(この制度も1月に改定されて、高額所得者は27万円ほどにまでアップ)

「医療保険制度改革関連法案」そのなかの「患者申出療養」制度(本質は混合診療解禁)によって、未承認の抗がん剤でも患者が希望すれば使用できるようになると賛成する意見があります。しかし、例えば海外では臨床試験が進んでいる大腸がんや肺がんの患者(ニボルマブは国内未承認)がこの薬を使いたいと申し出たとき、1600万円の負担に耐えられる患者はどれほどいるのでしょうか?

資産が数億以上の億万長者でなければ無理でしょう。金持ちだけが使える制度であり、しかも「混合診療」は未承認の薬剤費以外は公的保険で負担するわけですから、金持ちだけが利用できる治療法の保険部分を、貧乏人が負担する制度ということです。

一応安倍総理は、「国で安全性・有効性を確認するとともに、将来的な保険収載を目指すもので、混合診療を解禁するものではない」と明言しましたが(彼が前言を翻すのはいつものこと)、製薬会社としては、厚生労働省の厳しい審査を通す必要がある保険適用薬よりも、書類審査で済み、簡易な審査で薬価を勝手に決められる「自由診療」のほうがはるかに効率が良いし利益も大きい。となると、いずれ自由診療の薬が増えて公的保険に収載される薬は減っていく。国民皆保険だけではカバーできないので、アフラックなどの民間の医療保険に入りませんかとなるでしょうね。

もっと問題があります。患者申出療養制度を利用した結果、副作用などによる何らかの健康被害が生じた場合、患者が自己責任で選択したのだからということで、救済されない可能性があります。

国会で質問された塩崎厚労大臣は、「重篤な健康被害が生じた場合の責任などについては、現行の先進医療では、あらかじめ実施医療機関が患者に説明をし、同意を得て決定することとしており、患者申出療養でもこのような対応や患者を含む関係者のご意見を踏まえ具体的な詰めを行っていく」と答えるにとどまっているのです。

もちろん、今の保険制度にも問題はあります。大量の飲み残し薬の問題だとか。高齢化社会を迎えてどう改革していくのかも課題です。しかし、WHOが「1961年以降、国民皆保険制度が50年間にわたって堅持されてきたことです。この制度は日本の社会に公平感、連帯感をもたらし、長寿世界一を達成する上で大きな原動力となりました。」という現在の制度を、アメリカ並みの制度にわざわざする必要はありません。


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ニボルマブって幾らでしょうか?” に対して2件のコメントがあります。

  1. サトル より:

    69才の母が膵臓癌ステージ4b
    大学病院にて、ジェムザール+アブラキサンの化学療法
    統合医療クリニックにて、オプジーボ点滴、培養リンパ球の点滴
    を実施しております。
    効果は12月予定の大学での検査で。。。
    果たしてどうなるのか・・・効いていることを願うばかりです。

  2. !! より:

    昨日(20151027)のクローズアップ現代見ました
    免疫チェックポイント阻害薬 すごいですね
    保険が効けば多くの人が救われます

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