今日の一冊(96)『美しき免疫の力』

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【日 時】2018年12月23日(天皇誕生日) 13:10~16:30(開場・受付:12:50ごろ)
【場 所】JR京浜東北根岸線 大森駅東口から徒歩4分 Luz大森 4階 入新井集会室
【参加資格】膵臓がん患者とその家族、遺族
【参 加 費】500円(会場使用料及び資料代)
【定 員】 130名
【内 容】
●講演「私が手術、抗がん剤をやめたわけ」:待夢さん、SAKUさん
●患者さんどうしの情報交換会
●二次会(希望者だけ)

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がん細胞-電子顕微鏡でスキャン

『美しき免疫の力』人体の動的ネットワークを解き明かす

読み応えのある本でした。読み終わるのに1週間かかりました。免疫学者たちの探究が、まるでシャーロック・ホームズの活躍を見るかのような、推理小説ならおもしろいだろうなと思わせてくれます。

ただ、内容はサイトカインとか樹状細胞、インターフェロンなどの用語がたくさん出てくるので、難解だとアレルギーを起こすかもしれません。しかし、極初歩的な免疫学の用語を知っていれば、引き込まれるように読み進められて、いつのまにか、最先端の免疫学の知識を得ることができます。

著者のダニエル・M・デイヴィスは、英国マンチェスター大学の免疫学教授です。

前半「免疫学の革命はこうして起きた」では、免疫の研究の歴史を振りかえりながら、自然免疫と獲得免疫について物語風に書かれていますが、ここだけでもたくさんの”発見”があります。

後半は「内なる宇宙に挑む」。

がん細胞は熱に弱いー温熱療法

一部のがん細胞は、加熱されると「ストレス誘導性タンパク質」を細胞表面に表出させることが知られている。このタンパク質は損傷を受けた細胞の目印になるため、NK細胞は、この目印を掲げた細胞を攻撃して破壊する。

この原理を応用して「温熱療法」が行われている。ハイパーサーミアも温熱療法の一種である。

しかし、温熱療法の効果は限定的で、がん治療の定番ではない。その理由は、がんと熱、炎症、ストレス誘導性タンパク質との複雑な関係にある。

がんは2つの方法で免疫反応を都合よく利用している。

一つには、多くのがん細胞が、免疫細胞の特徴を自分のものとし、免疫細胞が増殖したり体ひゅうを動き回ったりする仕組みを乗っとって免疫細胞と一緒に増殖し、拡大し、拡散することができる。

さらに、免疫細胞を引き寄せるタンパク質や特殊なホルモンを分泌し、免疫細胞の攻撃を和らげつつ、あえて免疫細胞に囲まれることによって、局所炎症を持続させることで、がん細胞の増殖を図るのである。

熱によるストレスで表面に提示された「ストレス誘導性タンパク質」は、通常はNK細胞の攻撃の的となるのだが、がん細胞は、可溶性のストレス誘導性タンパク質を周囲に分泌し、これが免疫細胞の表面にくっつくことで、本物のがん細胞の検出を妨げることができる。

しかし、これが真逆に働くこともある。可溶性のストレス誘導性タンパク質がNK細胞を刺激したせいで、警戒態勢が強化され、NK細胞の腫瘍攻撃力が強化される場合もある。

つまり、加熱によってがん細胞が分泌するストレス誘導性タンパク質は、「ある状況では免疫攻撃のスイッチを切るが、別の状況では攻撃を強化させる」というのが、現在の最先端の知識であり、温熱療法が効いたり効かなかったりするのも、免疫と熱、炎症、ストレス誘導性タンパク質との複雑な関係が根底にある。「がん細胞は熱に弱いから、41度以上に熱を加えれば死滅する」と単純には言えないのです。

発熱は、多くの場合病気の治療には有効だが、ときには悪化させることもある。やってみなければ分からない。がん患者としても、温熱療法をやってみて効果がなければ、潔くやめることが自己防衛になると思う。

免疫チェックポイント阻害薬

本庶佑さんのノーベル賞受賞以来、免疫療法の話題が沸騰しています。この本でもCTLA-4阻害薬(ヤーボイ)とPD-1阻害薬(オプジーボ)の、原理と開発の歴史が紹介されています。

現在、国内で主に開発が進められている免疫チェックポイント阻害薬は▽抗CTLA-4抗体▽抗PD-1抗体▽抗PD-L1抗体――の3種類、7品目です。腫瘍免疫に関連する薬剤ではこのほか、免疫細胞を活性化する分子に対する抗体医薬も臨床試験に入っているものもあります。

キイトルーダが来月にでも膵臓がんに承認されそうだという情報もあります。

第8章「未来の薬」は免疫チェックポイント阻害薬に焦点を当てている。

がんとの闘いに免疫システムを利用する上でもっとも重要なことは何だろうか? 誰に聞いても同じ答えがかえってくるはずだ。ーー一言で表すなら「プレシジョン(精確さ)」である。つまり、、治療を行う際にその治療法で効果の出やすい患者のみを精確に選択するということ、そしてがんを標的にする免疫細胞セットのみを精確に強化するということだ。

免疫細胞ががんを攻撃する際にブレーキをかける役割をする受容体は、現在20種類を超えて発見されている。これらは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞などの特定の免疫細胞のスイッチをオフにする。

これらのブレーキ受容体を阻害する抗体の研究が世界中で進んでいる。

となると、患者にとってはこれからたくさんの免疫チェックポイント阻害薬が出てくるだろうが、その薬が自分に効果があるかどうかを簡単に見つけ出す方法が必要になってくる。一つ一つ試していくわけにはいかないからだ。

さまざまなバイオマーカーが開発されている。患者の腫瘍成分を分析すれば、免疫細胞上の特定のブレーキ受容体を作動させるタンパク質分子を腫瘍が産生しているかどうかを確認することができる。リキッド・バイオプシーなら血液一滴からそうした判断ができるかもしれない。

しかし、免疫システムは複雑でがんは狡猾である。

がん細胞は、免疫チェックポイント阻害薬のおかげで一つのブレーキが外れたとしても、腫瘍は順応して別のブレーキシステムを使うように変異する。何が免疫システムを抑制しているのか分かったとしても、翌日には状況が変わっている可能性がある。

治療した結果として状況が変化することもあり得る。免疫チェックポイント阻害薬は抗がん剤との併用によって治療の成績が上がるといわれているが、抗がん剤によって腫瘍の遺伝子変異も変わるからだ。

また、免疫細胞もがん細胞も極めて変化しやすい。同じ患者の体内でも大きく変動するし、同じ腫瘍でも日々様相が変わる。

CTLA-4受容体も、免疫細胞上でブレーキとして働くだけではなく、ときにはアクセルとして働くこともある。がん細胞を助けている可能性もあるのだ。

こうしたことによって、免疫チェックポイント阻害薬は2,3割の患者に対しての効果がないのだろう。

物理学の大統一理論のように、宇宙の神秘以上に神秘的な免疫システムを、一つの理論で説明できるようになるのは難しいだろう。

『美しき免疫の力』の内容を二つの側面から紹介したが、まだまだおもしろい話題がたくさんある。

がんも免疫システムも「複雑系」である。原因と結果が一対一には必ずしも対応しない。人類の挑戦はまだ続く。

がんと闘う多くの仲間がいます。

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