がんの最後は痛くない

もうクリスマスなんだなぁ。歳を取ると1年がますます速く感じます。

入所している老人ホームから連絡があり、弟の容態が思わしくないとのことです。

2歳年下の74歳の弟ですが、一昨年からたびたび病院や警察あるいは消防署から連絡があり、認知症で自転車に乗って転んだり、コンビニのトイレで暴れて店内を素っ裸で歩き回って警察に保護されたりし、そのたびに私に連絡が来ました。

昨年4月には1ヶ月間の遠距離介護で、大阪府の認知症対策のオレンジチームの援助を得て、迅速に有料老人ホームに入所させることができました。

その後大腸がんが再発して、しかも膵臓に食い込んでいるので手術ができない。

抗がん剤治療を始めたが効果がなく、副作用も耐えがたいので治療を中止しました。

緩和ケアに移行したわけですが、抗がん剤を止めるとすっかり元気が出て食欲も旺盛でした。

がんの終末期には、早期に緩和ケアに移行した方が余命が伸びるというエビデンスがあります。

弟の場合も余命は半年から1年と言われていたのですが、1年以上経過しております。

認知症で末期がんの状態ってことです。

担当のクリニックの先生には事前に次のように伝えて確認をしてあります。

  • 胃瘻などの延命治療は不要です
  • 医療用麻薬は、遠慮せずに使ってください。
  • 急変しても、介護士が動転して救急車を呼ぶようなことはしないでください
  • ともかく苦痛をとっていただいて、楽に逝けるようにしてください
  • この施設での「看取り」をお願いします

これがこれまでの経過ですが、1週間ほど前から痛みが出てきたようで、壁を叩いたりするようになりました。

フェントステープ0.5mgの貼用でいくらか治まっていましたが、これを1.0mgに増量し、安定剤などの服用もあって、現在は深い眠りに入っています。(鎮静までは必要なさそう)

今日明日が峠だろうと、ホームの管理者の方の話です。

無理な抗がん剤治療はやめて、早期の緩和ケアへの移行に加えて、医療用麻薬を適切に使用すれば、がんの最後の痛みは抑えることができます。

以上のような考えで老人ホームの施設の方の了解を得て対応してきました。

これが正しい対応だったと確信しています。

がんの最後は痛くない

がんの最後は痛くない

大岩 孝司
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WHO三段階除痛ラダーに従って、きちんと鎮痛剤を使えば、ほとんどのがんの痛みは和らぎます。痛みを自分でコントロールできるようになる。日本はまだまだモルヒネの使用量が少なすぎる。また、モルヒネが効かない痛みを考えるとき大切な概念として「トータルペイン」という考えがある。これは近代ホスピスの創始者であるシシリー・ソンダース女史が提唱したもので、がん終末期の痛み・苦痛は、

  1. 身体的痛み
  2. 社会的痛み(会社での居場所がなくなる、今後の治療費をどうする等)
  3. 精神的痛み(残された家族はどうなる、治療法を間違えたのかも・・)
  4. スピリチュアル・ペイン(霊的痛み)
    自己の存在への疑問。俺の人生は何だったんだ・・・

の4つを相互に関連したものとして、トータルでとらえなければならない、というソンダースのが考えです。

私の主治医である「赤ひげ先生」鈴木央先生の「週間がん もっといい日 Vol.107」にインタビューが載せられています。

次のように語っています。

鈴木医師の疼痛管理の考え方は、極めてシンプルなもの。モルヒネ、オキシコドン、それに貼り薬のフェンタニールの三つのオピオイドを、WHOラダーに則って使っていく。ただし、そのプログラムで行くと決めたら、徹底してラダーに沿った治療を進める。強い痛みには強い薬を、弱い痛みには弱い薬を、躊躇なく使っていく。医療用麻薬を中途半端に使うと、かえって苦痛を招く危険性があることを、鈴木医師は経験的に知っている。


「緩和ケアの目的は、単に痛みを取るだけではないんです。痛みが取れれば精神的なケアも進むし、それによって日常生活にもゆとりができる。苦痛が消えることで食欲が出る人もいて、それによって栄養状態が改善されれば、化学療法のパフォーマンスステータスが上昇することだってある。決して消極的治療ではありません」。

在宅診療の医療上のメリットもある。自宅を訪ねれば患者の生活水準を嫌でも知ることになるが、そこから患者の苦痛の一因を推し量ることもできるの

だ。鈴木医師が以前、経験した肺がん患者のケースを話してくれた。
「痛みが激しくて、麻薬の投薬量は増えていくばかり。食事も摂れないので、病院では高カロリー輸液を入れ、呼吸も苦しいので酸素もどんどん送り込んでいた。それでも、痛みが取れないまま在宅に切り替わったのですが、ご自宅にお邪魔してわかったのは、その方の最大のストレスは、“経済的不安”だということ。それで輸液や酸素の投与は止めてしまい、薬もできるだけお金のかからない投与法に変えたところ、きれいに痛みが取れました」

とにかく患者にも医師にも知ってほしいのは、がんの痛みがあるなら、どんな状況であっても麻薬は使えるということ。積極的治療の段階で麻薬を使うことは、安全性の面でも何ら問題のないことであり、たとえ早期のがんであっても、痛みがそこにあるのであれば、緩和ケアが介入すべきということを、当たり前の知識として持ってもらうことが大切なんです」

鈴木央先生、8月には「夕刊フジ~ブラックジャックを探せ」でも取り上げられてます。

弟は、クリスマスの日に眠るように永眠しました。有料老人ホーム 心月さんの手厚い介護に感謝いたします。


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