「膵臓がん患者と家族の集い」のご案内


【日 時】2025年11月29日(土) 13:15~16:00(開場:13:00)
【会 場】大田区立消費者生活センター 2階大集会室
【参加費】1,000円
【対 象】膵臓がん患者とその家族、ご遺族
【定 員】60名
【内 容】第1部:「温熱療法の最前線ー理事長が語るハイパーサーミアの治療効果」
         古倉 聴 京都先端科学大学教授 (社)日本ハイパーサーミア学会理事長
     第2部:患者・家族、ご遺族の交流会

申込締切は11月25日(火)19:00までです。
詳しくはオフィシャルサイトで


見過ごさないで!膵臓がん治療の効果を高める口腔ケアの重要性

はじめに:「治療が大変で、お口のことまで…」そう思っていませんか?

膵臓がんと診断され、日々治療と向き合っておられる患者さん、そして、そばで支えておられるご家族の皆様、本当にお疲れ様です。治療中は、体のつらさや今後のことへの不安など、多くのストレスを抱えていらっしゃることと思います。

「今は治療に集中することで精一杯で、お口の中のことまで考えられない…」

そう感じてしまうのは、無理もないことです。

しかし、最近の研究で、お口の中の環境が、膵臓がんそのもののリスクや、がん治療の経過に深く関わっていることが分かってきました。

ある海外の記事では、特定の歯周病菌を持つ人は、そうでない人に比べて膵臓がんになるリスクが著しく高いことが紹介されています。この記事では、口腔内の細菌が「静かな暗殺者」として、血流などを介して膵臓にまで到達し、がんのリスクを高める可能性を指摘しており、お口の健康が全身の健康、特に膵臓と密接につながっていることを示唆しています。

これは、がんの予防に限った話ではありません。現在、膵臓がんの治療を受けている方にとっても、お口のケアは治療を乗り越え、ご自身のQOL(生活の質)を維持するために、非常に大切な”支え”となるのです。

この記事では、なぜ膵臓がん治療中に口腔ケアが重要なのか、そしてご自宅で今日から始められる具体的なケアの方法について、分かりやすくお伝えしていきます。つらい症状を少しでも和らげ、治療を前向きに乗り越えていくためのヒントとして、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

過去にもこのような記事を紹介しています。

なぜ、がん治療中に「口腔ケア」が重要になるの?

膵臓がんの治療、特に化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療は、がん細胞だけでなく、分裂が活発な正常な細胞にも影響を与えます。お口の中の粘膜は、髪の毛や血液の細胞と同じように、細胞の生まれ変わりが非常に速いため、治療の副作用が現れやすいデリケートな場所なのです。

お口のトラブルを「少し我慢すればいい」「治療のつらさに比べれば大したことはない」と考えてしまうと、実は治療全体に影響を及ぼす、思わぬリスクにつながることがあります。

リスク① 食事が摂れず、体力・栄養が低下する

治療の副作用で口内炎ができると、食べ物や飲み物がしみて激しい痛みを伴うことがあります。また、味覚が変化して「何を食べても金属の味がする」「甘いはずのものが苦く感じる」「砂を噛んでいるようだ」と感じる方も少なくありません。

食事が苦痛になると、食べる量が減り、治療を乗り切るために不可欠な体力や栄養が不足してしまいます。「痛みで食べられない→体力が落ちる→治療の副作用が余計につらくなる→さらに食欲がなくなる」という悪循環に陥ってしまうこともあります。栄養状態の悪化は、免疫力の低下や治療薬の効果減弱にもつながるため、決して軽視できない問題です。

リスク② 全身の感染症につながることがある

治療によって免疫力が低下している状態では、普段は問題にならないお口の中の細菌が、体にとっての「脅威」に変わります。お口は細菌にとって格好のすみかであり、健康な時でさえ何百種類もの細菌が暮らしています。

免疫力が落ちると、これらの細菌が異常に増殖し、口内炎の傷や歯ぐきの出血部分から血管に侵入して、全身に広がってしまうことがあります。これが敗血症などの深刻な感染症を引き起こすこともあります。また、唾液や食べ物と一緒に細菌が気管や肺に入ってしまう「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」は、特に体力が落ちている時には命に関わることもある危険な合併症です。お口の中を清潔に保つことは、こうした全身の感染症から身を守るための重要な防御策なのです。

リスク③ 治療の継続が困難になる場合も

口内炎をはじめとする口腔トラブルの症状が重くなると、計画通りに治療を進めることが難しくなる場合があります。例えば、お口の痛みがひどくて水分すら十分に摂れなくなったり、感染症が悪化して熱が出たりすると、体が治療に耐えられないと判断され、やむを得ず化学療法を一時中断したり、薬の量を減らしたりすることもあるのです。

治療のスケジュールが遅れることは、誰にとっても大きな不安につながります。治療を最後までやり遂げるためにも、お口の環境をできるだけ良好に保つことが大切になります。

今日から実践!自宅でできる口腔ケア5つの基本

「ケアが大切なのは分かったけど、何から始めればいいの?」と感じるかもしれません。難しく考える必要はありません。まずは以下の5つの基本を、ご自身の体調に合わせて、毎日の生活に少しずつ取り入れてみましょう。

基本①「保湿」- お口の潤いを守る

唾液には、お口の中の汚れを洗い流し、細菌の増殖を抑え、粘膜を保護する「天然のバリア機能」があります。治療の副作用や薬の影響で唾液が出にくくなると、お口が乾燥し、粘膜が傷つきやすくなったり、細菌が繁殖しやすくなったりと、あらゆるトラブルの原因になります。

  • こまめな水分補給: 一度にたくさん飲むのではなく、少量の水やお茶を頻繁に口に含み、お口全体を湿らせるようにしましょう。
  • 保湿剤の活用: ドラッグストアなどで購入できる口腔保湿ジェルやスプレーは、粘膜に潤いの膜を作ってくれます。特に就寝前や乾燥が気になる時に使うと効果的です。
  • うがい: 刺激の少ないうがい薬や、ぬるま湯にひとつまみの塩を溶かした生理食塩水でのうがいは、保湿と同時に粘膜の保護にもつながります。
  • 部屋の加湿: 空気が乾燥する季節は、加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、部屋の湿度を保ちましょう。

基本②「清潔」- 細菌のすみかを作らない

お口のトラブルの多くは、細菌が原因で起こったり、悪化したりします。細菌の塊である歯垢(プラーク)や舌苔(ぜったい)をしっかり取り除くことが、お口の平和を守る基本です。

  • 優しい歯磨き: 歯ブラシは、ヘッドが小さく、毛先が「やわらかめ」のものを選びましょう。歯磨き粉は、爽快感の強いものは刺激になることがあるので、低刺激性のものや、つけずに磨いても構いません。力を入れず、歯と歯ぐきの境目をマッサージするように小刻みに動かして丁寧に磨きます。
  • 歯と歯の間の清掃: 歯間ブラシやデンタルフロスを使い、歯ブラシだけでは届かない汚れも除去しましょう。出血しやすい場合は、無理せずできる範囲で行いましょう。
  • 舌の清掃: 舌の表面の白い苔(舌苔)は、口臭の大きな原因になります。舌専用のブラシや柔らかい歯ブラシで、奥から手前に向かって、吐き気を感じない程度に優しく1〜2回撫でるように清掃します。やりすぎは舌を傷つけるので禁物です。
  • 入れ歯の清掃: 入れ歯をお使いの方は、毎食後必ず外して清掃し、就寝時は外して洗浄剤につけておきましょう。入れ歯にも細菌はたくさん付着します。

基本③「刺激を避ける」- デリケートな粘膜をいたわる

治療中の粘膜は、日焼けした肌のように非常にデリケートです。食事やケア用品で、余計な刺激を与えないように心がけましょう。

  • 食事の工夫: 熱すぎるもの、硬いもの(せんべいやナッツなど)、香辛料の強いもの(唐辛子やカレー粉など)、酸味の強いもの(酢の物、柑橘類など)は、痛みを引き起こしやすいので避けるのが無難です。人肌程度の温度で、おかゆやスープ、茶碗蒸しなど、柔らかく飲み込みやすい食事がおすすめです。
  • ケア用品の選び方: 洗口液(マウスウォッシュ)は、アルコール成分を含まない、刺激の少ないタイプを選びましょう。アルコールは粘膜を乾燥させ、刺激になることがあります。

基本④「観察」- 小さな変化に気づく

毎日、歯磨きのついでに、明るい場所で鏡を使い、お口の中をチェックする習慣をつけましょう。トラブルを初期段階で発見できれば、ひどくなる前に対処できます。

  • チェックポイント: 「歯ぐきが赤く腫れていないか、出血はないか」「頬や舌の粘膜に赤くなっている部分や、白い膜、口内炎はないか」「舌の色はいつもと変わりないか」「ヒリヒリ、ピリピリする場所はないか」などを確認します。
  • 簡単な日記をつける: いつから、どこが、どのように痛むかなどを簡単にメモしておくと、医療スタッフに症状を正確に伝えるのに役立ちます。

基本⑤「相談」- ひとりで抱え込まない

「これくらいの痛みなら…」「口の中のことで相談するのは気が引ける…」と我慢しないでください。お口のつらさは、QOLに直結する重要な問題です。専門家は、そうした悩みに応えるための知識と技術を持っています。

  • まずは医療チームに: どんな些細なことでも、気になる症状があれば、がん治療の主治医や看護師、薬剤師に伝えましょう。痛みを和らげる薬やうがい薬を処方してくれることがあります。
  • 歯科との連携: かかりつけの歯科医院があれば、がん治療中であることを伝えた上で相談することも非常に有効です。「がん治療連携」に力を入れている歯科医院もありますので、主治医に相談して紹介してもらうのも良い方法です。歯科医師や歯科衛生士は、専門的なお口のクリーニングや、個々の状況に合わせた具体的なケア方法を指導してくれます。

まとめ:お口のケアは、あなた自身を大切にするケアです

膵臓がんの治療は、心身ともに大きな負担がかかります。そんな大変な状況だからこそ、ご自身の「食べる力」「話す力」、そして「生きる力」を支える口腔ケアを大切にしていただきたいのです。

お口のケアは、面倒な「追加の作業」ではありません。感染症を防ぎ、栄養状態を維持し、治療をスムーズに進めるための、積極的な”治療の一環”です。そして何より、美味しいと感じ、食事を楽しみ、ご家族と会話をすることは、つらい治療を乗り越えるための大きな心の支えになります。ご自身でできるケアがあるということは、治療に主体的に関わることであり、それは大きな力になるはずです。

もし今、お口のことで何かお困りでしたら、どうか一人で抱え込まず、まずは一番身近な医療スタッフに「お口のことで、少し相談したいのですが」と声をかけることから始めてみませんか。その一歩が、これからの治療生活をより良いものにするための、大切な一歩になるはずです。

【参考資料】

がん情報サービス:在宅療養中のがん患者さんを支える 口腔ケア実践マニュアル


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