「がんワクチン」は”夢の治療薬”ではない

昨夜のNHKスペシャル「がんワクチン~”夢の治療薬”への格闘」、多くの方が観たようですね。関係のない、久留米大のがんワクチン事務局のホームページへのアクセスも急増したといいます。

難しい内容をわかりやすく説明しようとする努力は認めますが、いくつか問題もあります。

今年の2月に「あさイチ」で紹介されて話題になったワクチン:エルパモチドの第Ⅱ相試験の生存率曲線が番組で紹介され、がんワクチンに効果があったかのように説明されていましたが、エルパモチドの第Ⅲ相試験の結果は「有効性が確認できない」というものでした。番組ではそれにはほとんど触れませんでした。グラフを見た視聴者は「膵臓がんが治る」と誤解しかねません。

実際には一人の女性の膵臓がんの肝臓転移が消失したとされていますが、どうして第Ⅲ相試験で有効性が証明できなかったのか、「あさイチ」で紹介したNHKの責任としては、この点を取材して欲しかった。

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がんペプチドワクチンは”夢の治療薬”ではないことが、ますます明らかになってきたと思います。がんペプチドワクチンで、再発・転移した膵臓がんが治ることは、まずありません。番組で紹介されていた、現在進行中の数種類のペプチドを混合したカクテルワクチンでも同じです。延命効果があるだけです。ただ、抗がん剤と違って副作用がほとんどないから、患者の生活の質(QOL)の質は高いのです。延命した時間を副作用なしで過ごせることは何にもまして貴重です。

治験に参加した多くの患者も、たぶん「万が一、治るかもしれない」と期待しているのでしょう。

まだ治験最中の治療法を大々的に紹介することも異例です。がんペプチドワクチンの効果は半年後からと言われていますが、その半年時点での取材です。それだけ患者の期待が大きいということでしょう。千葉徳州会病院の講演会でも満員の聴衆でした。しかし、患者に過大な期待を抱かせる報道だと言って良い。

春のあさイチの放映後も、いわゆる「免疫療法」を標榜する、巷のあやしげな病院に患者が殺到したそうです。今回も同じ現象が起きなければ良いのですが。

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膵臓がん患者に希望を持って欲しいと思いますよ。しかし、過大な希望では患者を誤らせるだけです。抗がん剤はずっと効くわけではない。がんワクチンも腫瘍がなくなってしまうのではない。膀胱癌の再発予防効果も取り上げていました。中村祐輔教授はもともとこのワクチンは再発予防に使うのが効果的だと言っていました。しかし、治験結果ので無い段階で、再発防止効果があるかのように断定するのは、科学的ではない。

米国は国を挙げてがんワクチン開発を支援しています。日本の現状はお寒いかぎりで、やっと14億円の支援が決まったという。3.11後の復興予算が、100億円単位で復興とは無関係の、自衛隊の風呂場の改築などに支出されています。がんワクチンの開発に回した方が、まだましだと言えます。

男性患者の宮内さんが言っていました。「絶対に治してみせる」「これで生き延びられるかもしれない」と。希望を持つことは治療成績を上げるためにも大切です。
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しかし、”夢の治療薬”だと期待していると、裏切られることになる可能性が高い、と考えています。千葉徳州会病院の7人の治験参加者も、すでに4人の患者が、状態が悪くなって治験から離脱したと解説されていました。芳しい結果は出ないような気がします。もちろん、治験の結果は待ち遠しいし、今後も冷静に追跡します。

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