混合診療のなし崩し的な解禁に反対

7月18日に、日本難病・疾病団体協議会(JPA)が『混合診療のなし崩し的な解禁に反対する~必要な医療は保険適用が原則~』との見解を発表しています。(こちら

政府は6月14日、規制改革実施計画を閣議決定し、再生医療の推進のために、先進医療(保険外併用療養費)の対象範囲を大幅に拡大することを発表しました。(こちら)その中の「3 健康・医療分野」の①再生医療の推進の項に、

4 先進医療の大幅拡大
保険診療と保険外の安全な先進医療を幅広く併用して受けられるようにするため、新たに外部機関等による専門評価体制を創設し、評価の迅速化・効率化を図る「最先端医療迅速評価制度(仮称)(先進医療ハイウェイ構想)」を推進することにより、先進医療の対象範囲を大幅に拡大する。このため、本年秋をめどにまず抗がん剤から開始する。

と書かれています。

いわゆる先進医療制度は、先進医療部分は全額自己負担だが、その他の健康保険が適用された検査や手術などを受けた場合は、健康保険が利用できます。つまり、法律では禁止されている混合診療を、一定条件のもとに行えるようにしたものです。しかし、陽子線治療・重粒子線治療を例にとると、先進医療部分の自己負担は300万円ほどになります。「見解」は次のように訴えています。

再生医療などの高度先進医療は、多くの国費を投じた研究の成果でもあり、事実上、一部の経済的な余裕のある裕福な患者だけが受けることができる医療となるのは、同じ国民として極めて不公平であり、公正性を欠く施策と言わざるを得ません。

重粒子線治療は、放射線医学総合研究所が巨額の国費(税金)を投入してHIMACという世界初の装置を開発したのです。陽子線治療についても同様に少なからず税金が使われています。それを一部の富裕層だけが利用することには疑問があります。

政府の閣議決定は、この方向をもっと進めようとするものです。

自由診療が安易に認められるのは、十分な安全性と治療としてのエビデンスが確立していない段階で治療が行われる道を公的に認めるものであり、治療の効果の確認だけではなく、患者の生命や健康に大きな危険をもたらしかねないものである

NHK特集などでも、乳房の再生医療で大きな後遺症が残ったという報道されたように、再生医療が100近くのクリニックで実施されており、健康被害が続出しているといます。治療費も自由診療ですから、クリニックの言い値です。

厚生労働省は、いったん保険診療との併用を認めた自由診療の技術も、あらためて保険適用を検討する。「混合」は一時的なもので、いずれは保険適用し、国民等しく受けられるようにするという原則だ、と言いますが、「規制改革実施計画」では、先進医療を幅広く併用できるようにすると書かれているだけで、保険収載の迅速化には一切触れていません。

また、保険適用の対象になれば国が薬価などの公定価格を決めます。製薬企業にすれば自由に価格を設定できる自由診療対象のまま保険診療と併用できるほうが利益が出ると考えるでしょう。本来保険が利くはずの薬も自由診療のまま残り、低所得の患者は服用できなくなる恐れがあります。TPPでアメリカが要求してくるのは「自由競争」「政府の介入・規制の撤廃」であり、医療分野では薬価の決定に製薬企業を参加させろということです。なおさら高額の医療費を払わさせることになります。

仮に膵臓がんの抗がん剤「タルセバ」が自由診療だったとすれば、1ヶ月で30万円になります。高額療養費制度がありますが、自由診療部分には適用されません。全額自己負担でタルセバを毎日服用することのできる膵臓がん患者がどれほどいるのでしょうか。

アメリカでは膵臓がんに使える抗がん剤が10種類ある、それに比べて日本は・・・との議論もありますが、10種類の抗がん剤を使うことのできるのは、高額な健康保険に加入することのできる高所得の市民だけでしょう。そのような制度が理想だというのでしょうか。

「見解」は最後に、

私たちは、政府が混合診療の原則禁止の方針を堅持し、わが国が到達した高度な先進医療が、その効果と安全性が確認されたのち、速やかに医療保険の適用となり、みんなが等しく必要な治療が受けられることを強く願うものです。

と締めくくっています。抗がん剤も「効果の証明された薬を、早く、公平にでなければなりません。この問題に関して、がん患者団体からは賛成とも反対とも声が聞こえてきませんが、どういう立ち位置なのでしょうか。(私が知らないだけかもしれないが)

ま、お金がなくて新しい抗がん剤を使えなかった。あの程度のエビデンス、延命効果しかない標準治療を受けなくて、返って余命が延びた、ということも多いにありえますが・・・。


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