がんの名医は疑ってかかれ

 

日帰りで三春の滝桜に行ってきました。霧が出て幻想的でした。取りあえずの一枚。あとは次回に。


『週刊朝日』5月2日号の記事には衝撃を受けた。千葉県がんセンターで腹腔鏡下切除術を受けた患者3人が、術後まもなく死亡し、病院は医療事故調査委員会を設置して調査し、報告書を作成していたというもの。

  • 70歳代の女性:2011年10月にステージⅣaの膵臓がんと診断。その後化学療法を受け(たぶん腫瘍が縮小したので)手術することに同意。2012年9月25日に腹腔鏡下膵体尾部切除術をするが、手術中に血管から出血し、開腹手術に移行したが、改善せずに死亡。
  • 50歳代の男性:ステージⅣaの膵臓がん患者。2013年1月22日に腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術を行なうが、8時間15分の大手術後容体が急変、再手術を開始したところ、腸からの出血が確認された。翌日血圧が低下。再々手術を試みるが死亡した。
  • 80歳代の男性:2014年2月腹腔鏡下胆嚢切除術をしたが、2週間後に死亡。但し、病院側は「医療過誤ではない」と結論づけている。

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腹腔鏡を用いた膵臓がの手術で保険適用が認められているのは、良性または悪性度の低い”初期の”「腹腔鏡下膵体尾部切除術」だけです。それ以外は先進医療となり、保険適用されません。保険適用されていないのは、膵癌の腹腔鏡下手術は危険度が高く、通常の開腹手術と比較した治療成績も定まっていないからです。

1例目は確かに膵体尾部切除術ですが、ステージⅣaと末期の膵癌です。2例目は開腹手術でも、もっとも難易度の高いものの一つといわれる膵頭十二指腸切除術です。しかも同じくステージⅣa。これを腹腔鏡下で手術をするとは、「仮に死んだとしてもいいや」との思惑で手術に踏み切った「未必の故意」殺人に等しいと言われてもしかたがないでしょう。

週刊朝日の記事は、混合診療を不正請求したことが大きな問題として扱っていますが、そんなことよりも患者の生きる希望を奪ったことこそが大問題でしょう。1例目の女性患者の場合、私と同じ膵体尾部切除術でした。ステージⅣで手術不能と診断された膵臓がん患者にとっては、抗がん剤で腫瘍が縮小し、手術が可能となることが、完治するための残された唯一の希望なのです。通常の開腹手術をしていれば、5年生存し、完治すらしたかもしれません。不必要でやるべきではない腹腔鏡下手術を行なって患者の命と希望を奪ってしまったのです。

日本膵臓学会でも「末期の膵臓がんの腹腔鏡下手術は難しく、学会でもコンセンサスは得られていない。通情はやりませんね。」と言います。名古屋大学大学院腫瘍外科学のサイトにもこのように書かれています。

しかしながら、腹腔鏡下膵切除術は開腹膵切除術と異なり、現時点では限られた施設でしか施行することができません。当教室は、腹腔鏡下膵切除術を積極的に導入している施設です。腹腔鏡下膵切除術の対象となる疾患は、膵良性腫瘍、膵良悪性境界腫瘍、膵内分泌腫瘍、などで膵臓癌は対象となりません。

この医師は、日本における膵臓がん腹腔鏡手術の権威であり、日本肝胆膵外科学会の高度技能指導医に指定され、たくさんの論文も書いている医師である。その地位を維持するために次々と論文を書く必要があったのだろう。あるいは自分のことを「ゴッド・ハンド」だと錯覚していたのかもしれない。病院の緊急対策会議では、遺族から訴訟が起こされて混合診療を隠した不正請求が公になると、医療費の返還を求められることが問題だとの議論に終始している。患者への説明などは眼中にない。患者の貴い命を奪ったことも議論の対象にはなっていない。この病院にしてこの医師である。

患者は可能な限り情報を集めて、自分の判断材料を持つようにすべきだ。「先生に全てお任せします」は本当に危ない。論文をたくさん書く医者や名医や権威という評判には眉に唾を付けた方が良い。その道の権威だとて、たいしたことないと、3.11後は十分に学んだはずです。


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