マインドフルネス:痛みの観察
ばばりーなふじこさんからこのようなコメントをいただいていました。「師匠」は少し持ち上げすぎでしょ。
さすが師匠! 実は、手術前に何度か眠れないほどの痛みを感じた、とお聞きした時、「マインドフルネスストレス低減法の『痛みの観察』その他を実践されているのでは」と思ったのです。ですから、もしそうなら、退院後でも構わないのでレポートしていただけると有難いと密かに願っておりました。
私も、長時間の胃痛(どうも膵臓ではなさそう)を感じたとき『痛みの観察』を試みてみました。私は突発的な痛みは吐く息と一緒に飛ばしており、結構効果を感じています。しかし、長時間続く強い痛み(末期の膵臓癌ってとにかく痛そう)の場合はマインドフルネスの方が効果的な気がしています。これは私の勘ですが・・・ というわけで、オリジナルイメージ療法に加えて、少しずつでも試していけたらと思っています。
「瞑想」というと、何か神秘的なものと考える方が多いようですが、瞑想はそうしたものとは違います。いわば人格の涵養のための修練であり、セルフヘルプの方法です。必要なのは”今”という瞬間のすべてを進んで受け入れようとする姿勢です。”今”という瞬間に完全に意識を集中し、意識的に生きるという方法なのです。
何か人智を越えた超越的な存在に頼るとか、オーム真理教の教祖の”空中浮遊”のようなものとはまったく違います。あれは瞑想でも何でもないただのインチキです。瞑想とは、今の瞬間に意識を集中し、「なにもしない」ということなのです。ただそれだけ。ますます分からないと思われるかもしれませんが、鼻から入っては出ていく呼吸にだけ意識を集中し、意識が他のことを考え出したら、意識というのは本当にさまざまなこと、明日の予定、仕事の進捗具合、子供の成績や請求書のことなど、千変万化に移ろいます。その都度呼吸に意識を戻す、ただそれだけのことなのです。そんなので効果があるの? やってみればわかります。すぐに効果が現れてきますから。
自分の内部にある力を使って、いろいろな問題から来るプレッシャー自体を利用して上手に切り抜ける、ということです。がんであれ他の病気であれ、人生に起こるさまざまな問題を、まるごと抱きしめて自分自身の力を信じて対処することで、多くの問題を切り抜けることができるのです。もちろん、コントロールできない問題もたくさんあります。が、少なくともその問題に対して正面から対処する以外に有効な方法は存在しないのです。
目前に死が迫っているという最悪の状況も含めて、人生のあらゆるやっかいごとに上手く対処する方法を学ぶことができるのが、マインドフルネス瞑想法だと言えます。がんが治るとか、症状が劇的に改善するということを目的とするものではありません。しかし、結果的にそうなることもあるのです。なぜなら、まだまだ研究段階ですが、瞑想をすると免疫系による抗体反応がより強力になり、また、脳がポジティブに変化した人ほど、抗体産生が増加することが分かっているからです。
ふじこさんが言われるように、膵臓がん末期の慢性的な激痛にどの程度の効果があるのか、未経験の私にはわかりませんが、カバットジンによるともっと酷い疼痛にも効果があるといわれています。
痛みを観察して集中力を発揮していると、冷静に痛みを観察することができます。「私の痛みではなく、ただに痛みだ」という感覚が生じてきて、痛みを自分と切り離すことができれば、痛みの背後にある「穏やかな感じ」が知覚できるのです。
痛みは体験ですが、痛みから来る苦痛は私の反応です。反応は心で対処することが可能なのです。
今回の入院の前から、自宅ですでにボディスキャン瞑想法と静座瞑想法を何度か実行しています。手術前も手術後もこれを続けることで、”今”に意識を集中し、肩の痛みを観察し、痛みを受け入れたあとで、意識から切り離す。それには呼吸法、呼吸に意識を集中することが多いに役立ちました。こうすることで、完全には痛みはなくはなりませんが、鎮痛剤の効果とも相まって、翌朝からあたりまえのようにキーボードの前に座って作業することが可能になったようです。
私自身はマインドフルネス瞑想法のおかげかどうかは分からなかったのですが(痛みのないのがあたりまえだと思っていたので)、今から思い起こせばたぶんその効果があったのだと思います。
ふじこさんに促されて解雇して分析してみたのですが、妥当なのかどうかは分かりません。ま、ひとつの症例ということで。
入院していると運動不足ですね。今日は外出許可を得て、近所の郵便局まで行ってきましたが、病人の歩き方でした。やはりヒトは歩かなければダメです。