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医師は神であってはならないが、単なる人間であってもその責務は果たせない

脳神経学者であり医師でもある中田力氏は『穆如清風-複雑系と医療の原点』でこう述べている。

医療における不確定性は、複雑系のもたらす予想不可能な行動に由来し、実際にやってみないと結論が出せないことで満ちている。そして、やってみた結果が予想と反することなど日常茶飯事である。

それでも、現実的には、病に悩む人々に複雑系の理論を説いて納得を促すことは無理である。現場の臨床医は神に尋ねることも許されず、医学にすべてを委ねるわけにもいかず、不確定さを理解した上で、患者の選択すべき道を決定論的に示さなければならない。もっとも適切な選択は経験則だけが教えてくれる。しかし、それが必ず良い結果を生むとは限らない。だからこそ医療は、医師と患者との間に、ある種の盲目的な信頼関係がなければ成り立たないのである。

医師は神であってはならない。しかし、同時に、単なる人間であってもその責務は果たせないのである。

「複雑系」とは、相互に関連する複数の要因が合わさって全体としてなんらかの性質(あるいはそういった性質から導かれる振る舞い)を見せる系であって、しかしその全体としての挙動は個々の要因や部分からは明らかでないようなものをいう。-Wikipediaより。

原因と結果が1対1に定まらない。同じ原因があれば同じ結果になるとは限らない系です。銀河系も気候も、もちろん人間も複雑系です。タバコを吸ったからといって肺がんになるとは限らないし、肺がんの原因がタバコとは限らない。抗がん剤が効く患者もいれば、効かない患者もいる。多数の要因が複雑に絡み合って、時には<奇跡的治癒>のように、思いもよらない結果をもたらすのです。

エビデンスやガイドラインに従った治療を行っても、確実に治るという保証はない。医療の結果は予測不可能で、あくまでもある確率で治る可能性があるというだけのことです。ただ、その確率が高いものが(それ以外もあるが)ガイドラインとして推奨されているのです。

医療は不確実性の分野ですから、唯一の正解があるわけではありません。患者としてはどのような医師が望ましいか。『医者は現場でどう考えるか』の著者ジローム・グループマンは『決められない患者たち』で次のように述べています。

ある病気の治療について、「誰がベストの医師」か、と聞かれることがしばしばある。一つの判断基準として、その病気と治療に関する知識、科学的な データの用い方、いわゆるエビデンス・ベースト・メディシン(EBM)を行っているか、ということが挙げられる。しかし私たちが考えるベストの医師とは、さらに一步踏み込んで「ジャッジメント・ベースト・メディシン(JBM)」、すなわち使用可能なエビデンスを考えに入れることはもちろんだが、それを個々人にどのように当てはめるかをおもんばかった医療を行う医師である。

EBMとは「エビデンス」と「患者の意向」と「医療者の臨床技能」とを個々の医療プロセスにおいて統合、「目の前の患者の最大幸福」を追求するための方法論であり、道具です。

 


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