補完代替医療と『がんの統合医療』


【日 時】2020年8月16日(日) 13:30~15:30(開場:13:15)
【参加資格】膵臓がん患者とその家族、遺族
【参 加 費】無料
【定 員】 約50名
【内 容】ウェブ会議ツール「Zoom」を使ったWeb交流会となります。
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補完代替医療と統合医療

補完代替医療と統合医療は違うものなのか。違うとすればどこが違うのか。

シュレベールの『がんに効く生活』は副題が 『克服した医師の自分でできる「統合医療」』となっている。厚生労働省のがん研究助成金を得て作成されたのが『がんの補完代替医療ガイドブック 第3版』である。

ガイドブックでは「2.補完代替医療ってなに?」において次のように定義している。

補完代替医療は、英語でComplementary and Alternative Medicine(コンプリメンタリー・アンド・オルタナティブ・メディシン)といい、頭文字を取ってCAM(カム)と呼ばれています。

  • 補完医療:私たちが受けている現代西洋医学(通常医療)を補う「補完する」医療
  • 代替医療:現代西洋医学(通常医療)にとって代わる、言葉通り「代替する」医療

この二つの医療は、別々に異なるものもありますが、多くは分けることが困難な場合が多く、両者をまとめて補完代替医療といいます。

現代医学の細分化・専門化が進み、特に臨床においては患者の「こころ」や「特異性」が置き去りにされ、「臓器は診るが人は診ない」医療に対して患者の医療不信が広がっている。そこで理想的な医療のあり方として「全人的医療」「統合医療」が提唱されている。「ガイドブック」では、

さらに近年、これら補完代替医療と現代西洋医療(通常医療)を組み合わせることによって、患者さんの心と身体そして精神を総合的に考えて治療を行う「統合医療」という概念が生まれ、実践されています。

と説明している。しかし、日本においては「統合医療」の名の下に、エビデンスの乏しい代替医療を患者に勧めている医者もいる。その代表が帯津良一や安保徹、済陽高穂らであろう。

エビデンスに基づく補完代替医療

大阪大学には補完医療外来がある。そこの責任者である伊藤壽記教授は膵臓移植のエキスパートでもある。補完代替医療に関心を持ったきっかけを次のように話している。

確かに移植を行えば完全社会復帰ができますが、問題もあります。免疫抑制剤を服用しなければならず、感染症もかかりやすくなります。移植膵も長期的には慢性の拒絶反応で徐々に機能が失われていくなど問題もあります。

膵がんも、手術をしてもすぐ再発してしまう。最近は有効な抗がん剤も出てきているが、それでもまだがんの中の難病中の難病です。だとすれば、何か、他に活路を見出すことのできるものはないかと考えるのは当然でしょう。もっと患者の生活の質を上げる手立てはないかと。こうして見出したのが補完代替医療です。

伊藤壽記教授らが設立した「(社)エビデンスに基づく統合医療研究会」(eBIM研究会)では、エビデンスに担保されたCAMを現行の医療に有機的に融合させ、全人的な立場で治療する、新たな治療体系としての統合医療(Integrative Medicine)が求められているとしている。

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シュレベールの『がんに効く生活』は、患者サイドに立った「統合医療」の実践的な案内書であるが、日本の医療者、学者からはこのようなしっかりとしたエビデンスに基づいた書籍が出版されることは望めない。ましてや医療者に役立つがんの統合的医療(=統合腫瘍学)の教科書などは望むべくもない。

アメリカにおける統合医療

2009年に米国で『INTEGRATIVE ONCOLOGY』が出版された。統合腫瘍学の最新の教科書であり、監修者は、あの統合医療の提唱者であるアリゾナ大学教授のDr.ワイルと、カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授のDr.アブラムである。そしてその翻訳が、伊藤壽記教授らの監訳で『がんの統合医療』として2010年に日本でも出版されている。600ページの大書であり、かなり高価でもある。

目次は次のようになっている。

  1. なぜ,がんに対して統合医療でなければならないのか?
  2. がん予防に対する統合的アプローチ
  3. 化学予防に使用される植物もしくは植物薬の分子標的
  4. 食事とがん:疫学と予防
  5. がんにおける栄養学的介入
  6. がんの統合医療における植物薬
  7. カンナビノイドとがん
  8. 補完代替医療(CAM)と化学療法との相互作用一何がわかっているのか?
  9. 抗酸化物質に関する論争
  10. 運動とがん
  11. マッサージセラピー
  12. 統合的ながんのケアにおける「こころと体」の医学
  13. 中国伝統医学と中国現代医学
  14. アーユルベヴェーダによるがん治療の展望
  15. がんに対する初期治療および補助療法としてのホメオパシー
  16. アン卜口ポゾフィー医学,統合腫療学,がんのヤドリギ療法
  17. エネルギー療法とがん
  18. がん患者におけるスピリチュアルケア
  19. スピリチュアリティの役割
  20. 乳癌に対する統合医療
  21. 前立腺癌に対する統合的アプローチ
  22. 大腸癌に対する統合医療
  23. 放射線治療とがんの統合医療
  24. 症状緩和と緩和ケアにおける統合医療
  25. がん治療による毒性(副作用)を緩和する補完代替医療(CAM)
  26. がんに対する初期治療としての代替療法
  27. 補完代替医療(CAM)とがんに関する研究の方法
  28. がんの統合医療における真実と真実を伝えること
  29. 患者の観点
  30. 統合腫療学(がんの統合医療):その未来

この本の序文の添えられたDr.ワイルの、エビデンスに関する考え方は注目に値する。

ワイルは次のように述べている。

ある治療法が害を引き起こす可能性が大きければ大きいほど、効果をもたらすとされるエビデンスへの要求水準が厳しくなるということである。われわれは害を生ずる可能性が低ければ、いまだにエビデンスが確立していない治療でも推奨することがある。例えば、進行性がんの患者に対する治療的マッサージは生活の質を高めるものであり、高血圧患者に呼吸法を教えるのは副交感神経系を亢進させることになるなどである。

現在医療には限界があり、医学は不確実性にみちている、さらに患者は病気に対してすべて違う反応をするのであるから、重篤な副作用がないようなものにまでランダム化比較試験によるエビデンスを要求するべきではない、ということです。

副作用がなく高価でないのなら、少人数の人臨床試験やマウスによるデータであっても、試してみる価値はある。


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