検査結果を患者に知らせた医師の苦悩
検査結果は患者のものです。それは間違いない。原則、検査結果は患者にすべて知らせるべきです。
しかし、ときにはそれによって、患者も医師も苦悩することがある。
『心にしみる皮膚の話』の著者で、メラノーマの治療にあたる京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が、AERAdot.にご自身の経験を語っています。
23歳の若いメラノーマ患者 香山さんの例です。
それまでは患者に検査結果を丁寧に説明していたのですが、メラノーマの肝転移が分かったとき、
「先生、今日の検査結果どうでした?」
病室で香山さんに聞かれた私は、
「もう少し検査結果がそろってからまとめてお話ししますね」
と返事をするのが精いっぱいでした。
しかし、患者さんは気付くのですね。突然検査結果を告げなくなったのですから。
そして香山さんは病院に来ることもなく、母親が先生に「抗がん剤治療は受けさせません」と告げて、数百万円もするがん治療のパンフレットを見せるのでした。
その代替医療の先生(免疫細胞クリニックだろう)の言った言葉は、
「副作用が起きる抗がん剤ではがんは治りません。息子には同封したクリニックの治療法を受けさせます。その先生は先日、私たちが相談に行ったとき『がんは必ず治ります」と強くおっしゃってくれました。私たちは治る治療を選びます」
でした。
このセリフは、何人もの患者さんから聞きますね。「治すために頑張りましょう」「奏功率は80%です」
がんと言われて間もない、知識のない患者を騙すあこぎな医者がたくさんいます。
検査結果の伝え方も難しい問題ですね。医者も苦悩しているということでしょう。
癌治療において、転移・再発した癌、あるいは最初から手術不適応の癌は
標準治療、食事療法などの民間療法、免疫療法などの自由診療
どれを行っても治りません、現代の医学・科学の限界です
まあ中には、数千人に一人レベルで治る人はいるのかもしれませんし
大腸癌など癌種によっては転移していても根治の可能性がありますが
一般的には、延命の期間に多少の違いがある程度でしょう
それがこの問題のすべてだと思います
もし転移再発した癌が治る治療法があれば、インチキ免疫療法などは
あっという間に駆逐されてなくなってしまうでしょう
患者にとって「治らない」ということを認めるのは辛く切ない話です
ですが、まずはこのことを周知することが大切だと思います
もう一度書きますが、転移・再発した癌は治らない
そのことを認識した上で、どのようにそれに対処していくか
これは患者さん一人ひとりの死生観、人生観にかかわる問題でしょうね
「抗がん剤では癌は治らない。延命治療だよ」と言うと、「頑張っている患者にそれは酷だ」という意見もあります。気持ちは分かります。
「偽りの希望」でも持っていた方が良い場合もあるでしょう。
しかし、再発したがんは抗がん剤では治らないことを知っている患者は4割程度だとも言われます。
その結果、無理な抗がん剤治療を最期の時期までやる。返って命を縮めているのです。
「治らない」ことを受け入れるには、キュープラー・ロスが言うように、何段階もの苦悩を経ることも必要なのでしょう。