いまさらですが、癌って何?

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「Keep On! 町工場」 今大田区の町工場がどんどんなくなっています。自動車関連の仕事はほとんどないのです。


癌というのはどういう病気なのでしょうか。いまさらですが。

癌は遺伝子(DNA)の異常から始まります。ヒトの身体は約60兆個の細胞からできており、役割を終えた細胞は死んで(アポトーシス)、新しい細胞と置き換わります。細胞分裂することで新しい細胞ができるのですが、このときある確率でDNAの複製ミスが起きます。このミスは、ある意味では生物にとってなくてはならないものなのです。生物はDNAのミスによって新しい形質を獲得して、環境の変化に耐えられる性質を持つことができるようになり、生きのびることが可能になるのです。(『遺伝子の夢』田沼靖一 などに紹介されています)

DNAのコピーミスから、私たちの身体の中には、毎日5000個ほどのがん細胞ができると言われています。しかし、これらの細胞の大部分は自ら死んでいったり(アポトーシス)、免疫系の細胞によって分解されたりして、増殖することはありません。簡単に言ってしまえば、免疫力が正常である限りはがん細胞が大きくなることはないのです。癌が大きくなったということは、自分の免疫力が癌を根絶することができなくなったということです。臓器移植された患者に免疫抑制剤を投与すると、癌になる確率が高くなるといいますが、これは逆に、免疫力が癌の増殖を抑えていることの証明であると言えます。

つまり、癌とは、私たちのからだ、免疫力が正常な本来の働きをしていないことの結果としての現象なわけです。三大療法といわれる手術・放射線・抗がん剤治療は、この現象としての癌をやっつけることを主眼にしているいわば対症療法ないのです。もちろん三大療法が不要だとか効果がないとかいう意味ではありません。風邪で高熱があるときは、とりあえず体温を下げる必要があります。外科をしたときは出血を止めなければなりません。大きながん細胞はもはや免疫の力だけではやっつけることは難しいので、手術ができるのならした方がよいのです。

現象の奥に潜んでいる法則性を見つけて一般化するのが科学です。例えば物理における万有引力の法則。リンゴが木から落ちるが月はどうして落ちてこないのか、こうした現象を万有引力の法則として取り出すことで、その他の現象にも応用できる理論ができあがるのです。その意味で、現在の標準的な癌治療はまだ科学と言える領域になっていないと思います。モグラたたきのように、現れてきた癌をやっつける(それも不十分にしかできていないのですが)だけです。

癌が見つかったときの治療方法については、三大療法として研究されてきました。また、末期癌の患者へのホスピスなども最近はやっと注目され、いくらかはましになってきました。つまり、癌治療における初めの時期と最後の時期に関しては、ある程度対策が取られているのです。しかし、その中間、手術後の再発防止、あるいは切除できない場合の治療に関してはお寒い限りで、患者は何をどうすればガンの再発を防ぐことができるのか、抗がん剤をこのままやっていて果たして癌が治るのだろうかと不安を抱えて闘病生活をおくらなければならない状態が続きます。こうして多くの癌患者が、怪しげなサプリメントやえせ宗教に走る原因を作っているのではないでしょうか。

手術や抗がん剤は『時間稼ぎ』です。いずれは癌が元気を取り戻してくる前に、これまでの生活習慣が癌を作った根本原因なのですから、生活習慣を180度変えることがガン治療には絶対に必要であり、科学的な治療方法だと言えます。じゃぁ、何をどうすればよいのか。手術を終えた大病院では教えてくれることはありません。せいぜい再発したときにはこの抗がん剤がありますよ、というだけです。

やらなければならないことは、自分の生活習慣を変えるということであり、ごく当たり前のことなんです。食べ物を変える。ストレスを溜めない・頑張りすぎない。栄養を摂る。身体を温めて血流を良くする。ごくごく当たり前のことを地道に続けることです。しかし、癌の特効薬はないと分かっていながら、「魔法の弾丸」を探している癌患者がなんと多いことでしょう。

9.11事件でいえば、ツインタワーに突入しようとする航空機を見逃すことはできないでしょうから、撃墜するなりの対応は必要でしょう。しかし、軍事力によってアルカイダやテロを撲滅させることは不可能です。無理を通して泥沼にはまっているのがブッシュのアメリカです。このように欧米の考え方は、往往にして、当面の現象・出来事に力で対処しようとして失敗するのです。

癌も同じだと思います。当面の敵を手術や抗がん剤でたたく必要はあります。緊急事態ですから。ですから抗がん剤はすべて悪だという主張には私は与しません。しかし、それで万事大丈夫だといえるほど癌は甘くはないはずです。免疫治療やDNAワクチンなど新しい治療方法が取りざたされていて、私も関心を持って調査していますが、これらだけに期待することはやはり「魔法の弾丸」を探すことになります。仮に有効だとしても、癌という現象に対する対症療法にしか過ぎないでしょう。対症療法が必要としている患者もたくさんいますから、大いに期待したいところですが、これをやったらあとは万々歳ということはできないと思います。

産婦人科で妊婦さんが「先生、私の子供を産んでください。お願いします」と言えば唖然とされるでしょう。しかし癌患者で、「先生、私の癌を治してください。お任せします」と不思議なことを不思議とも思わず言っている患者が如何に多いことでしょうか。癌の多くは生活習慣病です。生活習慣病は医者には治せないのです。直せるとも思っていないのではないでしょうか。自分の生活習慣を変えることが、がん治癒への必要条件です。

多くの癌が『生活習慣病』と言われる意味を、良くかみしめてみましょう。


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いまさらですが、癌って何?” に対して5件のコメントがあります。

  1. かあな より:

    20年ほど前に私は膵臓がんで祖父を亡くしました。
    肝臓を長く患い、毎月診断に行っていたにもかかわらず
    末期の発見で癌が分かりました。享年63さい。
    当時の私は幼く、63歳というのが若すぎる逝去だとはおもいませんでした。
    五年前、親友が32という若さでなくなりました。スキルス性の癌で2
    年ほど戦いましたが。
    がんとは何か?何で命に関わるのか、未だ理解出来ません。
    たまたま通りがってしまったページですが
    異色な遺伝子がなぜ痛みを伴って死にいたるのか?
    もっと、分かりやすく教えてほしいと思ってしまいます。

  2. キノシタ より:

    すいたんさんへ。
    先天性の異常が発がんを誘引したということですか。「生活習慣病」という言葉が傷つけてしまったようで、申し訳ありません。
    癌となる要因は、食べ物・環境からの放射線・先天的な遺伝子異常などのファクターがあるのでしょうが、これらがあるからといってすべてのヒトが癌になるわけではなく、癌への引き金となるのが多くの場合生活習慣であるといわれています。
    確かに悪性メラノーマなど、必ずしも生活習慣が主な要因とは言えないものもあるようです。

  3. キノシタ より:

    TMさん。
    やはり明るく元気な人が長生きしているんだなぁと、お会いしてそう感じました。またお会いする機会がございましたら、ゆっくりとお話でもしたいですね。今後ともよろしくお願いします。

  4. すいたん より:

    このブログはとても勉強になるので、いつも拝読しています。
    いつもは読み逃げで申し訳ありません。
    がんは生活習慣病?
    でも、私の胆嚢がんは膵胆管合流異常症が原因だと言われました。
    先天性の発生異常です。
    1年以上も経過観察で検査を続けましたが、発見された時にはリンパ節転移、ステージⅣでした。
    手術後肝転移、もう治りません。
    がんは生活習慣病の要素が多いけれど、そうばかりではないのもあるんです。
    親族にがん患者はいませんし、自分自身の生活習慣に問題があると思っていません。
    がんは生活習慣だと言われるのは辛いです。

  5. T.M より:

    先日の会でお目にかかったものです。
    すい癌にならなければ、あのような機会はなかったかと思うと、ちょっと不思議な感覚です。患者としては、ほんの少し先輩ですが、キノシタ様の胆力には及ぶべくもありません。未だ自らの状況にアップアップしており、お恥ずかしい限りです。
    癌との闘いでは、正確かつ最新の情報をいかに得るかが重要だと思っています。これからもキノシタ様のブログに期待しております。
    癌情報だけでなく、旅のことなど身辺雑記も興味深く拝読しております。次の検査クリア後には私も「一の宿倶楽部」のどこかへ行こうかと計画中・・・。

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