手術は免疫療法

今日はこれからチェロのレッスン。「夢のあとに」は次回ということになって前回のレッスンから「イパネマの娘」に取りかかっています。ボサノバのリズムに四苦八苦です。どうしてもリズムに乗り切れない。メトロノームで練習したが難しい。体で覚えなければダメかも。

2/4|●○○● ○○●○|○○●○ ○●○○|
=|タツツタ ・ツツタツ|ツツタツ・ツタツツ|

このようにアクセントが移動するので混乱するのです。あるベース奏者もブログで次のようにこぼしているから、チェロの初心者である私だけの問題とも言えないようです。

そこでボサノバなんですが(?)、相変わらずしっくりきません。
基本的にはいくつかのお約束のリズムパターンを繰り返し弾いているのですが、どれも乗り切れない演奏になっているのが判ります。
たいして早いテンポで無い場合でも、なんだか常にリズムが遅れそうで慌てて弾いているといった感じです。
各小節の頭の拍に対して、自分の中の感覚が少し遅れているみたいなんですよね。

そじ坊で熱燗を一杯引っかけてレッスンの臨めばうまくリズムに乗れるかも、と。


三大療法否定論者(船瀬俊介氏とか安保徹先生を思い浮かべてください)は手術は危険だ。がん細胞が全身に散らばるし、後遺症も残る。抗がん剤は、もともと毒ガスから開発されたもので、猛毒であり、さらに発がん性もある。放射線はDNAを破壊して、これも発がん性がある。と言われます。しかし、このようなボタンAを押せば赤いランプがつき、Bを押せば青いランプがつくというような、原因と結果が一対一に単純に関連している事象は、自然界にも人間社会にもほとんど存在しません。

テレビで納豆がいいと言われたら店頭から納豆が消えてしまうような日本社会ですから、単純明快さを好む(というよりもそれ以外の思考方法を知らない)人が多いということなのでしょう。Amazonで「著者:安保徹」で検索すると90冊にもなっています。「体を温めれば癌は治る」という単純な理論?(仮説)を広めるのにどうして90冊もの著書を出す必要があるのかと、素直に考えてみれば「これはおかしい」と感じる感性すらも、どうやら失った人が多いようです。

安保氏と同じ免疫学者の多田富雄さんが書いた名著『免疫の意味論』にこんなことが書かれています。(ちなみに著者:多田富雄で同じようにAmazonで検索すると74冊ヒットしますが、多田さんの幅広い共用を表わしており、免疫学だけでなく能に関するもの、『落葉隻語』などの随筆など多彩です。)

免疫の意味論免疫の意味論』において多田さんは「手術は免疫療法でもある」と言います。手術で腫瘍の大部分を取り除いたとき、遠くに散らばっているがん細胞が免疫反応によって消滅するのです。腫瘍が大きいときにはがん細胞が免疫抑制を促す物質を放出しており、免疫力が押さえられているのですが、それを取り去ると、がん抗原を認識したリンパ球(T細胞、B細胞など)が小さながんの固まりを攻撃できる態勢になる。がんにも、はしかのように獲得免疫があるというわけです。つまり一度がんになると同じがんにはならないらしい。最も患者が生き残ることができればですが。

9月11日のブログでも紹介したメトロノミック療法では、少量の抗がん剤をチョコマカと投与することによって、驚くような疾病制御率があることが発表されたのですが、がん組織の増殖をささえる血管新生を押さえる作用だけではなく、がん免疫反応を維持し、がん細胞自体を“休眠状態”に導く、と結論づけています。また、われわれ膵臓がん患者にとっては大切な抗がん剤ジェムザール(ゲムシタビン)も、がん免疫反応を促進する効果があることが確かめられているのです。つまり抗がん剤も使い方や種類によっては免疫力を高めてがんの増大を抑える効果があるのです。三大療法否定論者が言うようには、その効果は単純ではありません。

多田さんの言葉を借りれば、がんは「自己」と「非自己」の境界に位置しているのであり、同じがん細胞や他の細胞、免疫系を含めた生命体全体を構成する「複雑系」の一要素であるわけで、しかもがん細胞もまた複雑系、といように多層構造になっている。「スーパーシステム」でもあるのです。

がん患者にしてみれば、これさえやっていれば必ず治ると言ってもらいたい。その気持ちは分かりますが、原因と結果が一対一に対応したり、食事療法をしていればがんは必ず治るとかの、あまりにも単純明快な治療法は”似非療法”だと断定しても良いのです。

話は変わりますが、映画にもなったマイクル・クライトンの『ジュラシック・パーク』にはカオスやフラクタルに関する記述が頻繁に出てきますね。続編の『ロスト・ワールド』は複雑系について数学者イアン・マルカムが解説してくれます。『タイムライン』も読んだけど、こちらは量子力学とエヴェレットの多世界解釈が取り上げられていて、タイムマシンも登場する。これも面白かった。恐竜もがんになっていたようですから、がんは生物発生の初期から存在しているのでしょうね。

「自己組織化臨界現象」という考えをすれば、がんと地震、山火事や株式の暴落がすべて同じ法則に基づいているということが証明できるそうです。複雑系って本当に面白い。

ジュラシック・パーク〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) ジュラシック・パーク〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
マイクル クライトン Michael Crichton
ロスト・ワールド―ジュラシック・パーク〈2 下〉 (ハヤカワ文庫NV) タイムライン〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) ディスクロージャー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208)) エアフレーム―機体〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
by G-Tools

膵臓がんと闘う多くの仲間がいます。応援のクリックをお願いします。

にほんブログ村 病気ブログ 膵臓がんへ
にほんブログ村

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村


スポンサーリンク

手術は免疫療法” に対して6件のコメントがあります。

  1. エリ より:

    ありがとうございます! 週刊現代早速読んでみますね! 父は 今日も元気です! 私が 子供たちを連れて病院へ行くと 説教されちゃいました(笑)孫のパワーは 娘よりもすごい!と思って嬉しくなりました。とりあえず今月10日に退院の予定です。本当は先月30日に予定していた退院でしたが ステントやポートのトラブル等々の発熱があり ちょっと延期になってしまったところでした。本人も私達家族も まだまだ不安はありますが 4ヶ月以上の入院生活に父は 本当に頑張ってくれました。今後 自宅療養になりますが 私と母でしっかりサポートしながら父を応援していきたいと思っています。家族みんなで頑張ります! ありがとうございます!

  2. のっぽ187 より:

    キノシタさん
    お返事、有難うございます。
    食生活については、自分なりに気を付けているつもりですが(ダヴィド・S・シュレベール著「がんに効く生活」の内容に比較的、忠実な食生活を送っています)、改めて、「これを続けて行こう。」と思いました。

  3. キノシタ より:

    陶さん。さすがに早いレスですね。お元気そうで何よりです。
    週刊現代の記事は私も帰りに本屋で立ち読みしてみます。
    樋口強さんも出ていましたか?あの人も頑張っていますね。

  4. より:

    今週号の「週刊現代」、早速購入して読んでみました。前編となる今週号では4人のがん生還者が取り上げられていて、そのうちの
    お一人は、「いのちに感謝の独演会」を続けておられる樋口強さん。
     すい臓がんから生還した方は、48歳のときに膵頭十二指腸切除術(膵臓半分、胃の3分の2切除)を受け、64歳の現在まで16年間再発なし。
    今もお元気で靴屋を夫婦で営んでおられるとのことです。本当にこういう記事は患者や家族に大きな力を与えてくれます。
     この方の場合、強い黄疸の症状があって、病院で検査をした結果は「胆管がん」の疑いあり。奥さんが、がんセンター中央病院(当時)に
    居られた高山医師(現在は日大板橋病院の外科教授で肝臓がんの名医として高名)にたどり着き、そして、精査の結果はすい臓がん。
    当初の診断はステージIIIだったとか。しかし、がんは5cmもの大きさで進行したもので手術時間も13時間に及んだそうです。
    記事からも奥さんの献身的な介護があったことがよく分かりますが、とにかくこういう、患者と家族に頑張る元気と力くれる情報はありがたいですね。

  5. キノシタ より:

    のっぽさん。
    私の患者ではあっても免疫学者ではないので、確かなことは申し上げられませんが、同じがんには確かになりにくいといいます。しかし、書いたようにがんは「自己」と「非自己」の境界にある細胞です。がん細胞はいろいろな手段で免疫系をだまそうとします。敵ながらあっぱれともいうべき能力を持っています。
    あなた任せの免疫依存ではなく、がんが喜ぶ生活からはきっぱりと縁を切ることでしょう。食生活・精神生活、体のデトックス。自分でできる免疫力を高める生活に180度切り替えることではないでしょうか。そうして初めてがんと対等に闘える体制ができるのでしょう。免疫学は発展の途上です。先日も理化学研究所から「免疫応答を抑制する分子メカニズム」に関連する研究発表がありました。このように日々新しい知見がでています。

  6. のっぽ187 より:

    いつも、「勉強になるなあ。」と思いながら、読んでいます。
    本文中の「がんにも、はしかのように獲得免疫があるというわけです。つまり一度がんになると同じがんにはならないらしい。」ですが。
    僕は、直腸癌以外に大腸ポリポーシスもあったため、直腸癌の摘出と共に大腸を全部、摘出しているのですが、もし残っていた場合、残った大腸から癌は出来ないということなのでしょうか。それとも、癌になり、増殖した細胞に対し、免疫が出来ただけなので、同じ大腸でも、別な場所から生じた癌に対しては、その時、獲得した免疫機能を発揮することは出来ないのでしょうか。
    お教え頂けると、有難いです。

のっぽ187 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です