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膵がんの多剤併用療法は有効か?

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23日、パンキャン主催の「膵がん勉強会 X’mas スペシャル 2012」に参加しました。杏林大学・古瀬純司先生の講演内容は「FOLFIRINOXR、Gem+paclitaxel 多剤併用療法時代の幕開け」です。

FOLFIRINOXRとnab-paclitaxel(アブラキサンR)の効果と副作用について情報を得るのが目的で参加しました。現在、膵臓がんで使うことのできる抗がん剤はジェムザールRとTS-1R、それにタルセバRの3剤です。FOLFIRINOXも、まもなく国内での安全性確認の臨床試験が終わり、近々承認されるでしょう。アブラキサンも既に国内での臨床試験が始まっています。ドラッグラグ解消に向けて進んでいる感じです。

しかし、ドラッグラグに関しては、アメリカで承認されたゲムシタビンが、2001年に日本で使えるようになるまでに5.1年かかりました。ところが、タルセバは5.7年かかって今年の7月にやっと承認されたのです。厚生労働省は「ドラッグラグは解消に向かっている」と言っていますが、われわれ患者の実感とはかけ離れています。これに関しては、東大医科研の上昌広教授が「現代ビジネス」の「インチキがんワクチンはどうしてなくならないのか?」という記事で次のように書いています。

 それは、統計の取り方が違うからだ。厚労省がドラッグ・ラグを議論する際に対象とするのは、「世界中いろんな国で治験をおこなっている製薬会社が、たまたま我が国で治験をした薬剤」だけだ。
厚労省によれば、欧米とのドラッグ・ラグは2年程度で横ばいだが、我が国で治験に着手されない薬剤を対象に含めれば、開発段階での遅れは2009年で3.0年程度。1996年の1.2年より悪化している。

タルセバは間質性肺炎などの重篤な副作用が危惧されるので、がん診療連携拠点病院および特定機能病院に限定されていることもあって、使用症例は少ないと言います。GEM+タルセバの使用条件は、①喫煙暦なし②慢性肺疾患なし③60歳代前半まで④副作用に絶えられる体力、という条件がつきますから、膵癌患者の2割程度にしか適応できないようです。私も①と③、④から対象にはならないでしょう。しかも、ひどい副作用があるのに生存曲線はほとんど変わりません。
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FOLFIRINOXは腫瘍縮小効果が32%(GEMは9%)と言われていますが、

副作用は「地獄を見た」と言われるほどです。延命効果はタルセバよりも大きいのですが、副作用で好中球の減少はGEMの2倍程度あり、その他の副作用もGEMと比べてはるかに大きいのです。
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FOLFIRINOXを現在投与しているhdさんのブログ「膵臓癌-生存競争」に、副作用の程度が詳細に書かれています。31歳と若いhdさんですからこの程度で済んでいるのかもしれません。

アブラキサンについては、ASCO2010で膵癌の患者に投与してダウンステージが得られて手術可能となったとの報道がありました。3/13(23%)が治療の結果(腫瘍が縮小し)、外科的切除術が適用されました。セルジーン社が、最終の第Ⅲ相臨床試験を行ない、終了しています。結果は2013年1月24~26日にサンフランシスコで開催される2013年米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムに提出されています。内容は「大規模臨床試験(MPACT)により、膵臓がんに対する有効性が証明された」とされるだけで、詳細はまだ明らかにされていません。

アブラキサンが第3相試験で進行性すい臓がん患者における全生存期間の統計的に有意な改善を示す (スイス・ブードリー)

アブラキサンはヒト血清アルブミンと結合したことで、アナフィラキシーなどの重篤な副作用の心配がなくなったと言われています。しかし、乳がんの患者に投与した例ですが、大鵬薬品のサイトを見ても、他のpaclitaxel剤と比較して副作用が少なくなったとは言えないようです。むしろ増加した項目もあります。特に消化器系の障害の多い膵がん患者にとっては、下痢などは厳しいに違いありません。

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膵がんで使える抗がん剤が増えることは、選択肢が増える点では歓迎できますが、治療効果への疑問やひどい副作用が予想されるだけに、思いは複雑です。

さて、パンキャンの講演の最後で杏林大学の古瀬先生が「がんに振り回されない!」でうまくつきあうことが大事、と言われました。がん患者の「なんとか治りたい」との気持ちはよく分かるし、希望を持つことは大切ですが、希望が「執着」になっている患者も多いように思います。現代医学には限界があります。そして人間はいずれ何らかの原因による「死」を免れないのです。次々とドクターショッピングしたり、いかがわしい免疫療法にまで手を出して「あわよくば治りたい」などは、もしかして「執着」になっているのかもしれません。

「転移したがんは抗がん剤では治らない」延命効果だけだということを知らない、あるいは認めたくないがん患者も多いようです。「治ること」だけに目が向いていると、それ以外の景色が見えなくなります。ある時点では「ま、俺の人生こんなものか」と受け入れることが必要な時期が必ずやって来ます。

生活の質(QOL)を維持しながら、最期の貴重な時間を有意義に過ごすことも「がんとうまく付き合う」ことです。「積極的な治療は、そろそろ止める時期です」と、主治医ならなかなか言えないことを、はっきりと言ってくれる医者も必要です。

「がんに振り回されない」ためには、がんに関する最新の情報と知識、それに科学的合理的な判断ができる能力が必要です。そのためにも正しい情報を収集して学ぶこと。さらに言えば、医療に絶対はないし、標準治療はあくまでも統計的データに基づくものです。医者も統計的にしか決定ができないのですから、私にとって効果があるかどうかは結果論でしか言えません。したがって最後の決断には自分の価値観と哲学が必要です。どのような人生を送りたいのか、どのような最期を迎えたいのかは、日ごろからよく考えておくべきでしょう。


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膵がんの多剤併用療法は有効か?” に対して2件のコメントがあります。

  1. キノシタ より:

    kathyさん。コメントありがとうございます。
    上昌広先生は癌ペプチドワクチンに好意的な見解をお持ちです。先週号の週刊文春の記事では否定的な見解が載せられていました。
    サバイバー目指してまいりましょう。

  2. kathy より:

    上昌広先生のお書きになっていることには、とても共感しました。
    サバイバーになったら 組んで(?)声をあげたいと思うくらいです。(^^;)
    ところで、先日お書きになった 木下さんの体調も心配です。
    来年も 何事もなく、無事に生きますように。(お互いに、ですが(^^;)

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