治らなくても「敗北」ではない


Pocket
LINEで送る

DSC05344

秋明菊(シュウメイギク)<群馬県・赤城自然園にて>

がんが治らなければ「敗北」でしょうか。がん患者なら、あわよくば自分だけは奇跡的にでも治って欲しい、と考えることは当然でしょう。しかし、あまりにも「治る」ことにこだわりすぎると、人生の貴重な時間を治ることだけに費やしてしまわないでしょうか。

柳原和子さんも、治らなければ「敗北」という風潮があるのはおかしい、と言っていました。

柳原和子さんは、腫瘍が奇跡的に消失する体験を何度も経験している。そんな彼女が、もう最後だと思ったときの加島祥造との対談があります。その対談で、

どうやったって治らない。十年間頑張った。どうあがいたって、何をしたって、がんは追いかけてくる。

そのときに、「治ると思うことをやめよう」と思いました。残りの時間を、楽しく生きて死んでいけばいいやと、「何もしないこと」を始めたんです。

と話しています。彼女の遺稿を集めた『がん患者への贈り物 – 柳原和子の、最後に伝えきれなかった「言葉と知恵」』では、亡くなる直前までの心境を紹介していますが、「強い柳原和子」という偏見を打ち破りたいかのように書かれています。

医療を信頼すればするほど、治らなかったときの敗北感は大きいのでしょう。しかも、少ない例であるとはいえ、がんが奇跡的に治る患者がいるから、それが希望であると同時に、自分は敗者だという思い込みにつながります。

瞑想の初任者向けマニュアルといえる”パーリ教典”を解説した初期仏教の長老スマナサーラ氏はこんな風に言います。

治しても何の意味もないのです。死んだ人を生き返らせてあげるなどという、世の人が喜ぶ奇跡も、意味がありません。

だってせっかく生き返らせてあげても、また死んでしまいますからね。世間で言われる「生き返らせた」話は本当ではないと思いますが、本当だとしても馬鹿げているのです。たとえ、ガンを超能力で治してあげても無駄なのです。その人だって年をとって、結局は老い衰えて、死ぬのですから。

お釈迦様の唯一のアドバイスは「心を清らかにすること」でした。

治る病気なら治るし、治らない病気は治らない。しかし、せっかく生まれたこの人生を「大成功だ。これで良いのだ」と思って終えられるかどうか、これがもっとも重要なことでしょう。

治ることにこだわる人は、体の全体性、免疫システムの法則から言っても、逆に治ることを妨げているのです。

治るか治らないかは「成りゆき」なのです。複雑系である人体に対して、浅知恵で対処しても目的を達成できるという保証はありません。

正しい死生観を持って、死を恐れないことです。死ぬのは特別なことではない。あたりまえのことです。

我々は「死」を選択することで、遺伝的に優位に立った種の末裔なのです。大きな全体性の一部として、死を迎える姿勢を持つことが、逆に奇跡的な治癒への可能性につながるのです。

がんと闘う、たくさんの仲間がいます。応援お願いします。

にほんブログ村 病気ブログ すい臓がんへ
にほんブログ村

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村


スポンサーリンク

スポンサーリンク
治りたがる人には、治ることは希である。

このブログの関連記事

  • 良寛さんと多元宇宙論良寛さんと多元宇宙論 仏教の宇宙論 以前の記事でも書いたのですが、良寛にこんな歌があります。 沫雪(あわゆき)の中にたちたる三千大千世界(みちあふち) またその中に沫雪ぞ降る 三千大千世界 […]
  • バカボンのパパ:これでいいのだ!バカボンのパパ:これでいいのだ! ガンになったことが悪かったのではなく、ガンになる要因を持っていたことが悪かったのです。ガンになったらなったで、変えるチャンスです。その時に、あれこれ違う方法を探すより、生き方その […]
  • がん患者が考える『生』と『死』がん患者が考える『生』と『死』 私たちは、死を運命づけられてこの世に生まれてきた。しかし、その死を刑罰として受けとめるのではなく、永遠の解放として、安らぎの訪れとして受け入れることができるはずである。 ま […]
  • 彼岸花の命は短い-道元の死生観彼岸花の命は短い-道元の死生観 2007年に膵臓がんの手術後、快気祝いにと伊豆の修善寺に一泊で旅行しました。奮発して老舗の新井旅館に泊まったのですが、近くの散策路で一輪の彼岸花が大木の幹に咲いているのを見つけた […]
  • 死ぬ一時間前でも「どう生きるべきか」を問う死ぬ一時間前でも「どう生きるべきか」を問う   イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫) posted with ヨメレバ トルストイ 光文社 […]
  • 膵臓がんを告知されたときから「死」の準備をしよう膵臓がんを告知されたときから「死」の準備をしよう 今日のタイトル、過激ですか? ここ最近、膵臓がんで亡くなる方、転移・再発する方が多い、そんな気がします。統計的に言えばばらつきの範囲内なのでしょうが、膵臓がんに罹る人は確実 […]