変えられないことは受け入れる勇気を
朝日新聞政治部の記者で、膵臓がんを患いながら、ニュースサイト「AERA dot.」にコラム「書かずに死ねるか」を連載していた野上祐(のがみ・ゆう)さんが28日、死去した。46歳だった。
野上さんの最終回になった29日のテーマは「悩みへのちょっとした対処法」。亡くなる前日まで原稿を書き、推敲を重ねていたのですね。
次の言葉が印象に残っています。
【問2】 どう決めたらいいか迷った時はどうすればいいか。
【答】 選択肢がいくつかあるのなら、それぞれの良い点と悪い点を洗い出して比較すればいい。ただし、選択肢が1つしかないこともある。その場合は悩んでも仕方ない。「変えられることは変えましょう。変えられないことは受け入れる努力をしましょう」というラジオ人生相談の言葉をコラムで紹介したことがある。そこに時間を使うのはもったいない。その分、他に違うことをやったほうがいい。想像するに、選択肢が1つしかないのに悩む人は「もう変えることはできない」ことを受け入れるかどうかで四苦八苦しているのかもしれない。それなら、その手前で「選択肢がいくつもある場合もある。しかし、今回はそうではない」と、かなわぬ希望を念入りにつぶしておくといいだろう。変えられないことは受け入れる。
私が膵臓がんを告知された初診での会話。
「先生、手術は可能ですか?」
「う~ん、ぎりぎりできるかなぁ」
「では、お願いします。手術日を決めてください。」
手術をしても膵臓がんの生存率は低い。お腹を開けて、転移があればそのまま閉じることもある。再発の確率も高い。
しかし、手術をしなければ、確実に死が待っている。選択肢は一つだから迷っている場合ではない。その場で決断しました。
こうした場合は簡単だけど(とも言えないことも)、多くの場合は、「選択肢が一つかどうかが分からない」でいろいろと迷うのでしょう。
他の選択肢があるのかないのか、あるとしてもそれが有効な確率はどの程度か。ようするに自分の病気に対するリテラシーが必要です。
何も知識がなければ、選択肢がいくつあるのかさえも分かりません。その選択肢の重要度も分かりません。
足の速いと言われる膵臓がんでは、そうした情報を集める時間も限られています。効率よく、正しい情報にたどり着くための方法は?
取りあえずはインターネットで調べるにしても、情報の真贋を主治医やがんサバイバーに質問してみることでしょう。
今年もたくさんの膵臓がんの仲間とのお別れがありました。それぞれの生き様を拝見して、心を打たれたこともありました。ご冥福をお祈りいたします。