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今日の一冊(111)『すべての医療は「不確実」である』

まさに現在の私にぴったりのタイトルです。脊柱管狭窄症の術後の合併症として、創部感染あるいは椎間板に炎症がみられる術後椎間板炎などが起こり得ることは頭では理解していましたが、実際にわが身に起きるとは考えず、安心していました。

しかし、原発事故ではないですが、「起きる可能性のあることは、必ず起きる」です。医療に100%の安全はないし、100%治る治療法はありません。

すべての医療は「不確実」である (NHK出版新書 567)

すべての医療は「不確実」である (NHK出版新書 567)

康永 秀生
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著者の専門は臨床疫学、公衆衛生学、医療経済学です。ようするにエビデンスを研究する医学者。

医学は進歩し続けている。なぜか、それは医学が不確実だからである。膵臓がんに有効な治療法はいくつかあるが、基本的に「赤ひげ」の時代と大きく進歩したわけではない。

こんな逸話が紹介されている。

「五臓六腑」に膵臓は含まれていなかった。膵臓の存在すら認識されていなかったのである。1774年に杉田玄白らが『解体新書』を翻訳出版したとき、膵臓には「大機里爾(タイキリイル)」と称した。

山本周五郎の「赤ひげ診療譚」に末期の膵臓がん患者の診察に際してのやりとりがある。

「これは大機里爾、つまり膵臓に初発した癌腫だ」と去定が言った、

「癌が発生しても痛みを感じない、痛みによってそれとわかるころには、多く他の臓器に癌がひろがっているものだし、したがって消耗が激しくて死の転帰をとることも早い」

「すると、治療法はないのですね」

「ない」と去定は嘲笑するように首を振った、「この病気に限らず、あらゆる病気に対して治療法などはない」

風邪に抗菌薬はむしろ有害だし、しかしそれでも抗菌薬を処方する医者が絶えないのはなぜか、患者はなぜインチキ医療を選ぶのか、画期的な治療法として紹介されても、ネズミに効果があっても人に効果がないわけ、など科学的に考えるヒントを与えてくれます。

生涯にがんにはなると覚悟せよ、そしてがん治療革命などないし、「がん撲滅」は不可能だと断言する。

注目したいのは、漢方は「代替医療か?」のページで、21世紀に入り、漢方医学は「科学的根拠に基づく医療」の仲間入りをするようになった。ランダム化比較試験も多数実施されるようになり、医療ビッグデータを用いた漢方研究も徐々に進められているそうだ。

また、2001年には医学教育に漢方医学が組み入れられ、全国の大学医学部で漢方医学の講義が徐々に採り入れられている。

費用のかかりすぎるランダム化比較試験を補完するものとして、「医療ビッグデータ」が注目されている。

人口動態調査などの政府統計、今進んでいる「がん登録」などがビッグデータとして活用を期待されているが、診療報酬明細書(レセプト)にはより詳細な情報が含まれている。厚生労働省のレセプトを集めたNDBとDPC(包括支払)病院のデータを活用したデータベースが実用化されている。

病院情報局」の「DPC全国統計」からは、これらのビッグデータを検索することができる。

著者らは、脳梗塞患者に、遅れて実施される治療のオプションであるアルガトロバン・オサグレルの効果を調査した。これらの薬は科学的根拠に乏しく日本では沢山使われているが、欧米ではほとんど使われていない薬である。

DPC全国統計データを使って、傾向スコアマッチングという統計処理を行い、ランダム化比較試験と同程度のバイアスの少ない調査を行うことができた。

その結果、これらの薬には統計的有意差がないという結果だった。

遺伝子解析やビッグデータ、AIを組み合わせて活用した医療がますます発展するに違いない。


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