スポンサーリンク

今日の一冊(111)『すべての医療は「不確実」である』

まさに現在の私にぴったりのタイトルです。脊柱管狭窄症の術後の合併症として、創部感染あるいは椎間板に炎症がみられる術後椎間板炎などが起こり得ることは頭では理解していましたが、実際にわが身に起きるとは考えず、安心していました。

しかし、原発事故ではないですが、「起きる可能性のあることは、必ず起きる」です。医療に100%の安全はないし、100%治る治療法はありません。

すべての医療は「不確実」である (NHK出版新書 567)

すべての医療は「不確実」である (NHK出版新書 567)

康永 秀生
902円(09/18 01:58時点)
Amazonの情報を掲載しています

著者の専門は臨床疫学、公衆衛生学、医療経済学です。ようするにエビデンスを研究する医学者。

医学は進歩し続けている。なぜか、それは医学が不確実だからである。膵臓がんに有効な治療法はいくつかあるが、基本的に「赤ひげ」の時代と大きく進歩したわけではない。

スポンサーリンク

こんな逸話が紹介されている。

「五臓六腑」に膵臓は含まれていなかった。膵臓の存在すら認識されていなかったのである。1774年に杉田玄白らが『解体新書』を翻訳出版したとき、膵臓には「大機里爾(タイキリイル)」と称した。

山本周五郎の「赤ひげ診療譚」に末期の膵臓がん患者の診察に際してのやりとりがある。

「これは大機里爾、つまり膵臓に初発した癌腫だ」と去定が言った、

「癌が発生しても痛みを感じない、痛みによってそれとわかるころには、多く他の臓器に癌がひろがっているものだし、したがって消耗が激しくて死の転帰をとることも早い」

「すると、治療法はないのですね」

「ない」と去定は嘲笑するように首を振った、「この病気に限らず、あらゆる病気に対して治療法などはない」

風邪に抗菌薬はむしろ有害だし、しかしそれでも抗菌薬を処方する医者が絶えないのはなぜか、患者はなぜインチキ医療を選ぶのか、画期的な治療法として紹介されても、ネズミに効果があっても人に効果がないわけ、など科学的に考えるヒントを与えてくれます。

生涯にがんにはなると覚悟せよ、そしてがん治療革命などないし、「がん撲滅」は不可能だと断言する。

注目したいのは、漢方は「代替医療か?」のページで、21世紀に入り、漢方医学は「科学的根拠に基づく医療」の仲間入りをするようになった。ランダム化比較試験も多数実施されるようになり、医療ビッグデータを用いた漢方研究も徐々に進められているそうだ。

また、2001年には医学教育に漢方医学が組み入れられ、全国の大学医学部で漢方医学の講義が徐々に採り入れられている。

費用のかかりすぎるランダム化比較試験を補完するものとして、「医療ビッグデータ」が注目されている。

人口動態調査などの政府統計、今進んでいる「がん登録」などがビッグデータとして活用を期待されているが、診療報酬明細書(レセプト)にはより詳細な情報が含まれている。厚生労働省のレセプトを集めたNDBとDPC(包括支払)病院のデータを活用したデータベースが実用化されている。

病院情報局」の「DPC全国統計」からは、これらのビッグデータを検索することができる。

著者らは、脳梗塞患者に、遅れて実施される治療のオプションであるアルガトロバン・オサグレルの効果を調査した。これらの薬は科学的根拠に乏しく日本では沢山使われているが、欧米ではほとんど使われていない薬である。

DPC全国統計データを使って、傾向スコアマッチングという統計処理を行い、ランダム化比較試験と同程度のバイアスの少ない調査を行うことができた。

その結果、これらの薬には統計的有意差がないという結果だった。

遺伝子解析やビッグデータ、AIを組み合わせて活用した医療がますます発展するに違いない。


がんと闘う多くの仲間がいます。応援のクリックをお願いします。

にほんブログ村 病気ブログ すい臓がんへ
にほんブログ村

にほんブログ村 病気ブログ がんへ
にほんブログ村


スポンサーリンク

このブログの関連記事

  • がんとともに自分らしく生きるがんとともに自分らしく生きる EBM(Evidence-Based […]
  • 帯津良一のホメオパシーを批判する帯津良一のホメオパシーを批判する 書店に五木寛之と帯津良一の『健康問答』が平積みになっていた。「健康問答―平成の養生訓 」と「養生問答―平成の養生訓 」だが、文庫本になる元は同じ平凡社から2007年に出版された『 […]
  • オメガ3とがんオメガ3とがん 安西英雄氏のTwitterから。 消化器がんにオメガ3が良い、というレビュー論文。基礎研究ではオメガ3はがんの増殖、サバイバル、血管新生、炎症、転移に好影響があるこ […]
  • 愛犬の病気愛犬の病気 我が家には二頭のヨークシャーテリアがいます。7歳と4歳の療法ともオスですが、その一頭の7歳の方が、しばらく前から左後足をビッコをひいている様子なので、病院に行ったのですが、「歩け […]
  • やっと退院やっと退院 2度目の手術・入院からやっと退院しました。 「脊柱管狭窄症の手術なんて、膵臓がんに比べたらかすり傷」と考えていたのですが、傷口から黄色ブドウ球菌に感染し、39度の熱に、炎症 […]
  • 線虫で膵臓がん早期発見のニュース線虫で膵臓がん早期発見のニュース 超音波検査の前に「午後の紅茶ミルクティー」を飲むと、すい臓がんが見つけやすくなるってニュースがあったけど、今度はこれ。 早期の発見が難しいとされる膵臓(すいぞう)がんにつ […]
  • 甲状腺がん甲状腺がん 月曜日に甲状腺がんの細胞診をやってきました。先週の超音波検査結果で「たぶん嚢胞で良性だろうが念のため」と言われ、細胞診となった次第です。「超音波ガイド下穿刺吸引細胞診」というそう […]
  • ホウ素中性子捕獲療法の新しい機運 ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)とは? ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)の原理は、患者にホウ素(10B)を含む薬剤を投与し、がん細胞に取り込ませたうえ、加速器を利用して熱中性子を […]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です