今日の一冊(139)『がんで不安なあなたに読んでほしい。』
がん研有明病院 腫瘍精神科部長の清水研先生の本です。
「腫瘍精神科」って聞き慣れないですが、どんな科なのでしょうか。がんと心の問題を扱うのかなと、察しはつきますが。
精神腫瘍学(サイコオンコロジー)は、がんと精神・心理との相互の影響を扱う学問です。
がんという状態が、本人や家族・医療者に与える精神・心理的影響を研究する目的と、精神・心理・社会的因子(家族、職場、地域、社会資源など)ががんの発症や罹患後に与える影響を研究する目的がありますが、日本では前者の目的が主になっています。清水先生のこの本もそうした立場で書かれています。
後者の、心ががんにどのような影響を与えるかの問題意識では、元聖路加病院精神腫瘍科の保坂隆先生がいくつかの本を出されています。
いまでは、全国のほとんどのがん診療連携拠点病院には、精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)が配置されています。
さて、清水先生のこの本では、がん患者が悩む問題について、患者に寄り添う姿勢で多くの事例を取り上げています。
目次をあげておきます。
いくつか具体的に紹介してみましょう。
子供を置いて死ななければならない。その現実が辛い
がんが全身に転移していて、完治はできないと宣告されました。息子はまだ中学3年生で私はシングルマザーです。様々な現実があまりに苦しいです。
息子が小学校3年生の時に夫と離婚しましたが、「僕は大丈夫だよ」と言って健気に頑張ってくれていました。息子には苦労ばかりかけてきたので、絶対病気を治そうと思っていたのに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
がんになってからも息子さんのために病気を治そうと頑張ってこられたのですよね。
子育て、仕事、治療すべてに取り組むことは並大抵の苦労ではなかったかと思います。やり場のない怒りがご自身に向かっているのかもしれませんが、これからもたくさんのことに取り組んでいかなければならないですし、どうぞご自分の心を痛めつけるのはやめてください。
息子の将来のことも心配になります。
今までの息子さんのご様子を伺うと、困難と向き合って頑張る力も持っておらおられるように思います。
大人が思う以上に子供は強かったりしますし、困難と向き合うことは、我慢強さや優しさを育むという側面もあるでしょう。祖父母に見守られながら成長していかれることを願います。
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死ぬのは怖い夜中に目覚めたりするととても苦しい
先生死ぬのが怖いのです。まだ明るい時間帯は良いのです。六十歳を過ぎ、いい年をして恥ずかしいのですが、真夜中に目が覚めて泣き出しそうになります。
こういう患者さんに対して先生は、六十歳を過ぎてとおっしゃいましたが、歳を重ねた方でも当然死の恐怖は感じます。死は未経験なことですから、恐怖を感じるのが当たり前、恥ずかしいと思われる必要はありません。
どうして死ぬのが怖いのか、そこを考えてみたらどうでしょうか。
死に対する恐怖は大きく分けると三つあります。
一つ目は死に至るまでのことへの恐怖。がんが進行してとんでもない痛みになるのではないかとかいう恐怖ですね。
二つ目は、自分がいなくなることによって生じる現実的な問題に対する恐怖です。残していく家族の生活のことや経済的な問題、やり残したことなどを考えることから生じる恐怖です。
三つ目は、自分自身がこの世から消滅しまうという「死」そのものに対する根源的な恐怖です。
それぞれの恐怖に対して対策を考えておきましょう。三つ目の自分の存在がこの世から消滅してしまうということに対する恐怖については、死は旅の終着点だと考えていますと先生は言います。
逆に私は、死は新たな旅の始まりだという風に考えることにしています。
清水先生の本、このように患者が抱える悩みに対して多くの気づきを与えてくれるます