今日の一冊(179)「なぜEBMは神格化されたのか」大脇幸志郎

500ページに及ぶ大書ですが、参考資料も丁寧に説明されているので、容易に読み進められます。
EBM(科学的根拠(エビデンス)に基づいた医療)に対する従来の”常識”に対して、別の考え、視点を与えてくれます。
この本は、医療関係者だけでなく、患者を含めて多くの人にとって重要な内容を含んでいます。

なぜEBMは神格化されたのか誰も教えなかったエビデンスに基づく医学の歴史

なぜEBMは神格化されたのか誰も教えなかったエビデンスに基づく医学の歴史

大脇幸志郎
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2020年から始まるCOVID-19パンデミック(新型コロナウイルス禍)では、あれほど強調されたエビデンスが、無残な姿を晒しました。

まともな臨床試験も終わっていない、全く新しいタイプのmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンを、世界中の国々が競って国民に接種しました。普段はRCT(二重遮蔽ランダム化比較試験) を重視して「エビデンスのない治療や薬は人体実験だ」とさえも言っていた専門家たちが、mRNAワクチンは21世紀の科学の勝利だなどと、手のひらを返すようにもてはやしました。

さらに言えば、故安倍晋三氏がアビガンを承認するように迫り、吉村大阪府知事は短期間に「大阪ワクチン」を開発するとぶち上げ、「ポビドンヨード」を含むうがい薬が新型コロナウイルスの減少に効果が期待できると、記者会見までして発表した。
「イベルメクチン」は新型コロナウイルス感染症COVID-19の「奇跡の」治療薬と呼ばれたが、明確な根拠はなかった。エビデンスなど全く無視をした政治的な強引な誘導も行われました。

コロナワクチン その不都合な真実』で、遺伝学者でmRNA研究者であるアレクサンドラ・アンリオン=コードが述べたように、新型コロナワクチンには十分なエビデンスが存在しないことは明白です。

ファイザー社のモデルナワクチンを例にとってみても、短期間の臨床試験しか行っておらず、10年後20年後の副作用は不明である。しかもその試験結果を当初は75年後でなければ公開しないと言っていた。(これはさすがに訴訟に負けたので、FDAは2022年に全データを公開した)

本書の概要

EBMの定義と歴史

EBMは「科学的根拠に基づく医療」を意味し、医学の質を向上させる方法論として広く認知されています。しかし、その実行には多くの課題がありました。

有名な鶏冠図を考案したことにより、ナイチンゲールは医療・公衆衛生に統計を導入した功績者とされているが、これは事実ではない。多くの資料をあげて説明しています。しかしナイチンゲールはクリミア戦争の後も、あくまで戦争が可能な軍隊を維持することを前提に、軍隊における看護の改善を訴えたのでした。ナイチンゲールが真に敵と味方の兵士の命も平等に大切だと考えるのなら、やるべきことは「戦争に反対することではなかったのか」、このように著者は指摘しています。

歴史的背景

公衆衛生の発達や臨床医学の進展、薬害事件などを背景に、医学が統計技術を取り入れてきた歴史が詳述されています。特に、前述したように、COVID-19パンデミック時にはEBMの問題が顕著に現れました。
ロックダウンやマスクの強制、ワクチン接種などの政策が、十分なエビデンスに基づかず、過度に政治化されたことで混乱や反発が生じました。EBMの掲げる科学的根拠に基づいた治療法や政策が、適切に評価されないまま実行され、効果を証明できない例が多かった。ワクチンによる死亡例や副反応など、その後の対策や評価も不十分です。


問題点と課題

EBMは既存の権威を強化し、医療の改善を妨げる傾向があります。2また、個々の患者の状況や価値観を十分に反映できない点も問題です。3これにより、医師たちはエビデンスに過度に依存し、自分で考え判断する力が損なわれる懸念があります。4
EBMの問題点は「エビデンス」への過度な依存を生み、既存の権威の温存し、実際の医療現場での活用に限界にある。本書で指摘されている論点が重要であるはずなのに、実際の医療も社会全体も、。
「エビデンス」に判断と責任を丸投げしてしまっている。

結論

EBMは「より良い医学」を実現できず、むしろ状況を悪化させたと指摘されています。統計的なエビデンスだけでなく、患者の価値観や社会的背景も考慮する必要があると強調されています。

EBMの問題点

エビデンスに基づく医学(EBM)の問題点について、以下の点が挙げられます:

個別化の欠如: EBMは統計的なデータに基づいて治療法を選択するため、個々の患者の状況や価値観を十分に考慮できないことがあります。これにより、患者にとって最適な治療が提供されない可能性があります。
過度な依存: 医師がエビデンスに過度に依存することで、自分で考え判断する力が損なわれる懸念があります。医療の現場では、経験や直感も重要な役割を果たすため、エビデンスだけに頼ることはリスクを伴います。
権威の強化: EBMは既存の権威を強化する傾向があり、新しい治療法やアプローチが受け入れられにくくなることがあります。これにより、医療の進歩が妨げられることがあります。
バイアスの影響: エビデンス自体がバイアスを含むことがあり、その結果、誤った結論に導かれることがあります。例えば、製薬会社がスポンサーとなっている研究では、ポジティブな結果が強調されることがあります。
実行の難しさ: EBMを実際の臨床現場で実行することは容易ではありません。時間やリソースの制約があり、最新のエビデンスを常に把握し、それを適用することは難しいです。
これらの問題点を踏まえ、EBMを補完する形で患者の価値観や社会的背景を考慮するアプローチが求められています。医療の質を向上させるためには、エビデンスだけでなく、総合的な視点が必要です。


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今日の一冊(179)「なぜEBMは神格化されたのか」大脇幸志郎” に対して3件のコメントがあります。

  1. まさ より:

    キノシタ様
    メールでも返信をいただいたのでコメント欄を確認していませんでした。申し訳ありません。
    コメント欄とメールで同時に返信できるシステムだったのですね。
    コメント欄から質問させていただいたので、私も返信をコメント欄にも書きたいと思います。

    キノシタ様、詳細な返信ありがとうございます。
    とても詳しく解説していただいてやはりあのブログの主様だと感じました。

    私が手術する際に執刀してくださった北海道の名医に思い切って相談のメールをした時と、
    同じような心境(まったく面識のない名人に相談のメールをする)でメールしたのですが、
    その時と同じように、迅速に詳細な返信が来ました。
    とても嬉しかったです。
    ありがとうございます。

    「一括りに電磁波と言っても、波長の違いにより遠赤外線からガンマ線まであります。もちろん可視光線も電磁波ですから、波長の短い紫外線によって皮膚がんになったりするわけです。 一般的に行って波長が短いほど発がん性が高くなります。X 線や ガンマ線はがん細胞を殺傷することもできるし、DNA の二重螺旋を切断することによって正常な細胞をがん化させることもあります。 発癌作用は統計的な現象です。電磁波を受けても必ずしも細胞が癌化するとは限りませんが、電磁波が強く頻繁に受ければ確率としては高くなります。 高圧送電線の下だとか携帯電話を脳に押し付けて使うのは電磁波の影響をもろに受けるのではないかという主張もありますが、国際的な機関においてはそれらは否定されております。」

    放射線から電波まで電磁波といってもとても幅があるのですね。
    電磁波という言葉からはマイナスのイメージしか一般人の私にはありませんでしたが、普段浴びている光も電磁波なのですね。

    「ハイブリッドカーなどの電磁波についても、質問のリンク先にも書かれている通り2000mG以下では問題がないとされています。 発がん性について賛否両論があるということは、仮にあったとしても微小な差異なので、大規模な臨床試験を行わない限りは見つけることが難しいということでもあります。 電子レンジからも微小な電磁波の漏洩がありますが、それが怖いから電子レンジを使わないということでは現在の生活は成り立たないでしょう。 要するに仮に微小なリスクがあったとしても、利便性との比較で採用するかどうかを考えればよろしいと思います。」

    微小なリスクと利便性の比較はとても大事ですね。キノシタ様のブログの記事を拝見していてもその考え方は一貫されていると感じます。

    「どうしてもハイブリッドカーに乗る必要があって発がんリスクが心配ならば、フロアに金属製のメッシュを貼れば若干は低下するのではないでしょうか。 電界強度や磁界強度と波長が重要な要素です。」

    私が添付した記事なども磁界強度について書いてあるものが多いですね。

    「自動車からの電磁波がどの程度の波長のものなのか分かりませんが、多分低周波波電磁波なのではないでしょうか。」

    そのようですね、種類自体は危険なものではないんですね。

    あるいはガソリン車にしておけば問題ないのではないですか。

    そうなんですよね、ただ試しにカーシェアで同じ車を借りて乗ってみたのですが、静かで新しい体験だったので。
    リスクと利便性を考えこんでいます。

    告知された日からブログを始めて、その日にチェロのレッスンに行くような胆力は私にはないので、本当にすごいなと
    感じていて、それからいろいろな情報に対する理論的な態度なお話や詩の話etc…沢山記事を読ませていただいて、
    生き方に対する態度や、養生にとても参考にさせていただいています。
    私の命の恩人のリストに勝手に入れさせていただいています(大袈裟だったら申し訳ありません)
    その方から秀逸なメールが来て、とてもテンションが上がっています。
    これからもブログ拝見します。

    まさ 

  2. まさ より:

    キノシタ様はじめまして。2016年に異型性髄膜腫という再発しやすい脳腫瘍の手術をした者です。
    キノシタ様のブログは手術後からずっと読んでいて、緑茶ミルや散歩はずっと続けていて現在の私を支えてくれる習慣になっています。
    ありがとうございます。

    コメント欄に投稿したのは、記事とは関係なくて申し訳ないのですが、キノシタ様への連絡手段がみつけられなくてすみません。
    質問なのですがいわゆる電磁波は人体に発癌的な影響があるのでしょうか。
    ハイブリッドカーなどの電池や配線などからも、ドライヤーや高圧線下地上同等の電磁波が計測されるようでhttps://denjiha.macco.co.jp/blog/hybrid-car
    ハイブリッドカーに乗ることを検討していて、果たして影響は大きくないだろうかと考えています。
    そんな中、定期的に拝読しているこのブログを読んで、キノシタ様は確かお仕事でそういったことに詳しいと思い出し、こんな形ですが投稿させていただきました。
    キノシタ様のご意見をお聞かせいただければ幸いです。宜しくお願い申し上げます。

    1. キノシタ より:

      まささん。
      一括りに電磁波と言っても、波長の違いにより遠赤外線からガンマ線まであります。もちろん可視光線も電磁波ですから、波長の短い紫外線によって皮膚がんになったりするわけです。
      一般的に行って波長が短いほど発がん性が高くなります。X 線や ガンマ線はがん細胞を殺傷することもできるし、DNA の二重螺旋を切断することによって正常な細胞をがん化させることもあります。
      発癌作用は統計的な現象です。電磁波を受けても必ずしも細胞が癌化するとは限りませんが、電磁波が強く頻繁に受ければ確率としては高くなります。
      高圧送電線の下だとか携帯電話を脳に押し付けて使うのは電磁波の影響をもろに受けるのではないかという主張もありますが、国際的な機関においてはそれらは否定されております。
      ハイブリッドカーなどの電磁波についても、質問のリンク先にも書かれている通り2000mG以下では問題がないとされています。
      発がん性について賛否両論があるということは、仮にあったとしても微小な差異なので、大規模な臨床試験を行わない限りは見つけることが難しいということでもあります。
      電子レンジからも微小な電磁波の漏洩がありますが、それが怖いから電子レンジを使わないということでは現在の生活は成り立たないでしょう。
      要するに仮に微小なリスクがあったとしても、利便性との比較で採用するかどうかを考えればよろしいと思います。

      どうしてもハイブリッドカーに乗る必要があって発がんリスクが心配ならば、フロアに金属製のメッシュを貼れば若干は低下するのではないでしょうか。
      電界強度や磁界強度と波長が重要な要素です。
      自動車からの電磁波がどの程度の波長のものなのか分かりませんが、多分低周波波電磁波なのではないでしょうか。

      あるいはガソリン車にしておけば問題ないのではないですか。
      私はETやハイブリッドに乗り換えるつもりはなくて、可能な限りガソリン車にするつもりです。

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