非小細胞肺がんの体幹部定位放射線治療
非小細胞肺がんに対する体幹部定位放射線治療の使い方について、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)が推奨を出しました。
肺がんの治療にも使われる体幹部定位放射線治療は、狙った場所に正確に放射線を照射する技術です。
SBRTとIMRT
体幹部定位放射線治療(SBRT)は、従来の放射線治療と違い3次元的に多方向から放射線を当てる治療法です。がん腫瘍に対してピンポイントに放射線を当てることが可能なため、大きな副作用を心配することなく、通常の放射線治療よりも多くの線量を当てることができ、高い治療効果が期待できます。主な適応疾患は肺がん、肝がん、脊椎および傍脊椎領域です。
強度変調放射線治療(IMRT)は、様々な方向から放射線を照射する時に、線量に強弱をつける治療法です。がんの形が複雑な場合や、がんの近くに正常組織が隣接している場合に、正常組織に当たる放射線の量を最小限に抑えながら、がんに多くの放射線を当てることが可能です。前立腺がん、頭頚部がん、脳腫瘍では、正常組織にも大きなダメージを与えてしまうことから、従来の放射線治療では困難でしたが、IMRTを使うことで、正常細胞へのダメージをより少なくした治療が可能になりました。
ASCOの推奨内容
ASCOは、アメリカ放射線腫瘍学会(ASTRO)が作成したSBRTのガイドラインを検証したうえ価値あるものと認め、ASCOの意見を参照する人が使いやすいよう細かな修正を加えて、自ら発行する専門誌『Journal of Clinical Oncology』に掲載しました。 早期の非小細胞肺がんがある患者が対象とされました。非小細胞肺がんとは肺がんのうち小細胞肺がんというタイプ以外のものを指します。 ASCOのガイドラインには、要約すると以下の内容が記載されました。
- ステージIで手術のリスクが標準的な患者にSBRTは勧められない。
- 手術のリスクが高いまたは手術不能と見られた患者でSBRTが考慮される。また以下のように治療法に迷うケースでもSBRTが選択肢となる場合がある。
- がんが中枢部に位置する
- がんの大きさが5cmを超える
- 組織診がなされていない
- 複数のがんが同時に発生している
- 肺切除術のあと新たながんが発生した
- がんが縦隔に近いか縦隔に及んでいる
- がんが胸壁に接している
- 前の治療後にがんが再発した