ハイパーサーミア:がん治療の新たな希望となる3つの理由
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がんと診断され、治療法について調べているあなたへ。数ある治療法の選択肢の中で、「ハイパーサーミア」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。温熱療法の一つであるハイパーサーミアは、体への負担が少なく、他の治療法との併用で相乗効果も期待できることから、注目を集めています。
『膵臓がん患者の集い』の参加者の中でも、多くの方がハイパーサーミアで治療を継続しています。
この記事では、ハイパーサーミアがなぜがん治療の希望となり得るのか、その仕組みから費用、そして治療を受けるためのステップまで、あなたの疑問を解消する情報をお届けします。
ハイパーサーミアががんに効く!そのメカニズムと期待される効果
がん細胞は、正常な細胞と比べて熱に弱いという特性を持っています。ハイパーサーミアは、この性質を利用して、体外から電磁波を照射し、腫瘍を局所的に温めることでがん細胞を死滅させる治療法です。

「熱に弱い」がん細胞を狙い撃ちするハイパーサーミアの仕組み
ハイパーサーミアでは、一般的に8MHzの高周波(ラジオ波)を用いて、がんのある部分を集中的に加温します。正常な細胞は血流が豊富で、熱を逃がすことができますが、がん組織は血流が悪く、熱がこもりやすい性質があります。そのため、がん細胞だけを効率的に42~45℃に温めることができ、がん細胞の増殖を抑えたり、アポトーシス(細胞の自殺)を誘導したりする効果が期待できます。体表の温度上昇を防ぐために、冷却装置を併用しながら治療が行われます。

免疫力を高め、がん細胞を攻撃する体の変化
ハイパーサーミアによる温熱効果は、直接的ながん細胞へのダメージだけでなく、体の免疫システムにも良い影響を与えます。熱によって、がん細胞は「熱ショックタンパク質(HSP)」と呼ばれる物質を作り出します。このHSPが、免疫細胞に対してがん細胞の目印となり、免疫細胞ががん細胞を攻撃する能力を高めることがわかっています。つまり、ハイパーサーミアは、体自身の免疫力を引き出し、がんとの闘いをサポートするのです。
放射線や抗がん剤との併用で治療効果を最大化する相乗効果
ハイパーサーミアの大きな特徴は、他の治療法との併用でその効果をさらに高められる点です。放射線治療や抗がん剤治療は、がん細胞のDNAにダメージを与えることで効果を発揮します。熱を加えることで、がん細胞のDNA修復能力が低下したり、薬剤の細胞内への取り込みが促進されたりするため、放射線や抗がん剤の効果が増強されると考えられています。これにより、より少ない放射線量や抗がん剤の量で同等の効果が期待でき、副作用の軽減にも繋がる可能性があります。
あなたのがん治療を後押しするハイパーサーミアの安心感と経済性
がん治療は、身体的・精神的な負担だけでなく、経済的な負担も大きな心配事の一つです。ハイパーサーミアは、これらの不安を軽減し、患者さんのQOL(生活の質)維持にも貢献する可能性があります。
身体への負担を最小限に抑える、ほとんどない副作用
手術や一部の抗がん剤治療に比べ、ハイパーサーミアは身体への負担が少ない治療法として知られています。主な副作用としては、治療部位の皮膚の赤みやほてり、軽度の痛みなどが挙げられますが、これらは一時的なものがほとんどです。全身への影響が少ないため、治療中の体調変化も比較的少なく、安心して治療を受けやすいというメリットがあります。
「しんどい」治療からの解放!QOLを維持しながら治療を続けるために
「がん治療はしんどい」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、ハイパーサーミアは、入院の必要がない場合も多く、治療時間も1回あたり最大50分程度と比較的短時間です。また、副作用が少ないことから、治療を受けながら日常生活を大きく制限されることなく、趣味や仕事など、自分らしい生活を継続できる可能性が高まります。これは、長期的な治療を乗り切る上で、患者さんの心の支えとなるでしょう。
気になる費用と保険適用について:治療の選択肢を広げる経済的メリット
ハイパーサーミアの費用について心配される方もいるでしょう。ご安心ください、ハイパーサーミアは健康保険の適用対象となっています。深部加温で1クール(8回)9,000点、浅部加温で6,000点の保険点数が付与されます。具体的な自己負担額は、保険の種類や自己負担割合によって異なりますが、保険適用があることで、経済的な負担を軽減し、より多くの患者さんがこの治療を選択できる可能性が広がります。
治療選択の疑問を解消!ハイパーサーミアを受けるための3つのステップ
ハイパーサーミアに興味を持ったら、次に気になるのは「どこで受けられるのか」「本当に自分に合った治療なのか」ということでしょう。ここでは、治療を受けるための具体的なステップと、疑問を解消するためのヒントをご紹介します。
どこで受けられる?ハイパーサーミア治療を行う病院の探し方
ハイパーサーミアは、すべての病院で受けられるわけではありません。専門の機器を導入し、温熱療法に精通した医療機関で実施されています。インターネットで「ハイパーサーミア 病院」や「温熱療法 がん 病院」といったキーワードで検索したり、がん診療連携拠点病院などに相談したりすることで、治療を受けられる医療機関の情報を得ることができます。
こちらのサイトには、多くのクリニックが紹介されています。
主治医に相談し、紹介してもらうことも有効な方法です。
日本ハイパーサーミア学会の「認定制度」ページのは、学会に認定された多くの病院・クリニックが一覧になっています。
「本当に効くの?」エビデンスに基づく治療効果の評価方法
ハイパーサーミアの効果については、様々な臨床試験が行われ、その有効性が報告されています。特に、放射線治療や抗がん剤治療との併用において、治療成績の向上が示されたケースが多くあります。治療を受ける前には、担当医から過去の治療実績や最新のエビデンスについて詳しく説明を受け、納得した上で治療を進めることが大切です。不明な点があれば、遠慮なく質問し、情報を十分に得るようにしましょう。
あなたの状況に合わせた最適な治療計画を立てるために
がんの治療は、患者さん一人ひとりの病状や体力、生活背景によって最適なものが異なります。ハイパーサーミアも、すべてのがん患者さんに適用できるわけではありませんし、単独で根治を目指すよりも、他の治療法と組み合わせることでより高い効果が期待できるケースが多いです。そのため、まずは主治医としっかりと話し合い、ハイパーサーミアがあなたのがんの種類や進行度、これまでの治療歴に照らして、どのような役割を果たせるのか、メリット・デメリットを含めて十分に理解することが重要です。必要であれば、セカンドオピニオンを求めることも、後悔のない治療選択をする上で大切なステップとなるでしょう。
【膵臓がんステージ4で抗がん剤治療中の患者様への注意事項】
膵臓がんは進行が早く、ステージ4の場合にはすでに遠隔転移があることが多く、抗がん剤治療が中心となります。このような状況でハイパーサーミアを検討される際には、以下の点にご注意ください。
- 現在の抗がん剤治療との両立性: ハイパーサーミアと現在の抗がん剤治療を同時に行う場合、それぞれの治療が互いにどのような影響を及ぼすか、副作用の増強はないかなどを、主治医とハイパーサーミア担当医の両方と十分に話し合う必要があります。
- 全身状態の評価: ステージ4の患者様は、抗がん剤治療の影響やがんの進行により、体力や臓器機能が低下していることがあります。ハイパーサーミアは比較的身体への負担が少ないとされますが、それでも治療に耐えられる体力があるか、慎重な評価が必要です。
- 期待できる効果と目的の明確化: ステージ4の膵臓がんの場合、ハイパーサーミアは根治を目指すというよりは、抗がん剤の効果増強、症状緩和、延命などを目的として検討されることが多いです。どのような効果を期待するのか、現実的な目標を医師と共有し、明確にしておくことが重要です。
- 治療の継続性: 抗がん剤治療と並行してハイパーサーミアを行う場合、通院の負担も考慮する必要があります。体調の変化に応じて、治療計画の調整が必要になる可能性もあります。
- エビデンスの確認: 膵臓がんステージ4に対するハイパーサーミアの明確なエビデンスは、現時点では限られている可能性があります。臨床試験や最新の研究情報を医師に確認し、納得した上で治療を選択することが大切です。
まとめ:ハイパーサーミアはあなたのがん治療の選択肢になるか
ハイパーサーミアは、がん細胞の熱に弱い性質を利用した、体への負担が少ないがん治療法です。免疫力の向上や他の治療法との相乗効果が期待でき、保険適用もあることから、多くのがん患者さんにとって新たな希望となる可能性があります。
しかし、どのような治療法も、その効果や適用には個人差があります。この記事で得た情報を参考に、まずは主治医とじっくりと相談し、あなたにとって最適な治療計画を立てることが何よりも重要です。ハイパーサーミアが、あなたの「しんどい」を少しでも和らげ、QOLを維持しながらがん治療を進めるための一助となることを願っています。