今日の一冊(115)「免疫療法を超えるがん治療革命」

増感放射線療法 コータック

あまり聞き慣れない治療法かもしれませんが、乳がんの方にはよく知られているようです。「Web女性自身」6月9日の記事でも紹介されています。

高知大学名誉教授で、高知総合リハビリテーション病院院長小川恭弘医師。放射線科医で、日本における乳がんの乳房温存療法の第一人者でもある小川医師が開発した治療法です。

乳がんに限らず、固定がんなら適用でき、費用も安くて、副作用も無い。しかもがんが完全消失する例がたくさん出るなど、夢のような治療法だと言います。膵臓がんに適用した例もあります。

その小川恭弘医師が、コータックについて書籍を上梓されています。

免疫療法を超えるがん治療革命

免疫療法を超えるがん治療革命

小川 恭弘
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コータックの原理

放射線治療を続けると、白血球数が減り、リンパ球がダメージを受けて減少しますが、逆にがん細胞には放射線が効きにくくなります。抵抗力も免疫力も低下し、肺炎でも簡単に亡くなってしまいます。

それでは、がん細胞とリンパ球の違いは何か。

放射線は細胞内に活性酸素を発生し、それが細胞のDNAを切断することによってアポトーシス(細胞死)に到らせるのです。

大きくなったがんでは、個々のがん細胞にまで酸素が届かなくなり、抗酸化酵素であるペルオキシダーゼが増えてきます。

ペルオキシダーゼは細胞をまもる「鎧」のようなものです。しかし、リンパ球にはこの「鎧」がありません。

だから、放射線でがん細胞は死なないのに、リンパ球が減少することになるのです。

ところが、がん組織から薄い切片を切り出して研究する際には、過酸化水素水(オキシドール)でこのペルオキシダーゼを失活させる必要があります。これをやらないと免疫組織科学染色ができないのです。

だったら、生きたがん細胞に過酸化水素(オキシドール)を注射して、リンパ球と同じ状態にしてやれば、放射線の効果がずっと続くのではないか。こう考えたのが小川恭弘医師でした。

コータックのより詳しい説明は、 兵庫県立加古川医療センターのサイトにあるPDFファイルをご覧ください。

増感放射線療法KORTUC(コータック)とは

効果のエビデンス(科学的根拠)はあるのか

小川恭弘医師は次のように語っています。

’06年にコータックを開発して以来、この治療法を行った症例は、全国各地で個々に手掛けている医師と私の担当分の合計で1,000例を超えています。直径15センチの乳がんを消失させた例や、末期の直腸がんを治した例もある。しかしいま現在、日本では保険適用がされていないので、全国に広く普及しているとは言えないのが現状です。私は一刻も早く、より多くのがんに苦しんでいる患者さん、ご家族を救いたい。そのためにこの治療法を広めたいんです。

保険適用されなかったのは、臨床試験に協力してくれる製薬企業が見つからなかったからです。オキシドールとヒアルロン酸の単価は300円です。50社以上の製薬会社に営業をかけたのですが、「300円では研究費用の分だけ赤字です」と断られたのです。

しかたなく、高知大学医学部の倫理委員会の許可を受けて、医師主導治験として研究を進めてきたのです。現在は全国で8つの施設でこの治療を受けることができるようになり、英国においては第Ⅱ相臨床試験にも進んでいます。

日本では、コータックが安すぎて製薬会社にメリットがないため、なかなか臨床治験ができませんでした。先にイギリスのロイヤル・マーズデン病院で、’17年から臨床治験が始まっていて、本年中にフェーズ2に入る予定です。そして3年後の’22年には、日本で新薬コータックとして認可されると予測しています。苦しむ患者さんや家族を減らすのが、私とコータックに課せられた使命ですから、全国の病院でコータックが受けられる体制を作りたいと考えています。

リンパ節に転移したトリプル・ネガティブの乳がんが、コータック療法で完治した歴史時代小説家の藤原緋沙子さんの体験談を始め、大腸がん、卵巣がんの患者の体験談も載っています。

健康保険の適用はないとはいっても、上に書いたようにオキシドールとヒアルロン酸の単価は安いものです。一般の健康保険による治療とほとんど差はないようです。


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今日の一冊(115)「免疫療法を超えるがん治療革命」” に対して2件のコメントがあります。

  1. おきなくら より:

    相模原の病院ではコータックやってません。
    毎日電話連絡が来て迷惑です。

    1. キノシタ より:

      おきなくらさん。
      最初からやっていないのでしょうか?
      いずれにしろ、本の出版社なり著者に訂正を申し出た方がよろしいと思います。

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