増感放射線療法コータックが英国で承認され日本に帰ってくるかも

2年前にこのブログで紹介した増感放射線療法のコータック(KORTUC)が、日経メディカルで取り上げられています。

英国の臨床試験で好成績

日経メディカルの記事は、「英王立マーズデン病院で2019年に終了した第1相臨床試験。ここで、放射線治療の常識を覆しかねない結果が得られた。」で書き始められています。

概要はこうだ。

  • 腫瘍径が30~164mm(T2が5人、T4が7人)の局所進行・再発乳癌患者12人に対し、リニアックを用いて約3週間の放射線治療を行った(2.75Gy×18回照射と6Gy×6回照射が6例ずつ、治療前に1人脱落)。
  • 照射2週目からは放射線増感剤のKORTUCを週2回、超音波ガイド下で腫瘍に局注。
  • その結果、12人全てにおいて腫瘍が50%以上縮小、半数は90%以上縮小し、1年後のフォローでも腫瘍の増大は認められなかった。
  • KORTUCは2020年から、英国癌研究所の主導で184例を対象にした第2相臨床試験が行われている。
  • 標準的な放射線治療とKORTUCを併用した放射線治療に無作為に割り付け治療効果を比較するという、実質、第3相も兼ねたトライアル
  • 早ければ2023年中にも英国で承認される可能性がある。
  • 英国癌研究所は2021年3月にも「KORTUCの有効性が証明されれば、世界中の何百万人もの患者の放射線治療を改善する可能性がある」とコメントし、結果に期待を寄せている

増感放射線療法 コータック

コータックの作用機序

高知大学名誉教授で、高知総合リハビリテーション病院院長小川恭弘医師。放射線科医で、日本における乳がんの乳房温存療法の第一人者でもある小川医師が開発した治療法です。

その小川恭弘医師が、コータックについて書籍を上梓されています。気にかる方は、この本を購読願います。

免疫療法を超えるがん治療革命

免疫療法を超えるがん治療革命

小川 恭弘
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治療をしている医療機関

国内では長崎県島原病院(長崎県島原市)、大阪医科大学付属病院、東京放射線クリニック(東京都江東区)などで、乳癌患者を中心に1000人以上の治療実績がある。

(上記の書籍には、もっとたくさんの医療機関が紹介されていたが、現在はこの3施設だけのようです。)

  • KORTUCの中身は極めて単純で、3%過酸化水素水(オキシドール)をヒアルロン酸ナトリウム水溶液で薄め、0.5%溶液にしたもの。
  • これを腫瘍に局所注射する

放射線治療で使われる X 線の弱点は、直径1 cmを超えるような固形がんの内部や特定の癌腫に対して効果が弱まることです。

コータックの治験対象となっている3cmを超えるようながんは、本来緩和目的や姑息的治療の一環としてでしか放射線治療は行われません。

しかも腫瘍組織は抗酸化酵素ペルオキシダーゼも過剰に分泌しており、自身の酸素化を防いでいます。

ここに過酸化水素水を注入することで、抗酸化酵素を失活させ、酸素を発生させるのです。

ヒアルロン酸ナトリウムは局注部位にとどまらせるための基剤として使用。

こうして放射線照射のターゲットとなる腫瘍を再酸素化することで、X線の効果を引き出すとしている。

コータックの材料費は数百円程度です。国内60社ほどに声をかけたと言われていますが、どこも臨床試験を引き受けてくれるところはありませんでした。

ところががん治療薬において費用対効果を重視するイギリスでは、小川氏の研究発表に注目がされました。その結果臨床試験にまでこぎつけたわけです。

低酸素状態で放射線に対する抵抗性の高い膵癌にも適用

「KORTUCの治療対象は乳癌だけではない。低酸素状態で放射線治療に抵抗性の癌のうち、局所注射ができる全ての固形癌が対象になる」(小幡氏)。実際に、米国では「固形癌」を対象としたKORTUCの治験が計画されている。

長崎県島原病院(長崎県島原市)放射線科診療部長の小幡史郎氏は、他科の医師と連携して、下部消化管内視鏡ガイド下での直腸癌への増感剤注入や、上部消化管超音波内視鏡(EUS)ガイド下での膵癌への増感剤注入も経験済みだ。


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