今日の一冊(180)『いのちの波止場』南杏子

この作品は、吉永小百合さん主演の映画『いのちの停車場』シリーズの最終話として位置づけられています。主人公は、広瀬すずさんが演じた看護師・麻世です。
前作では、金沢のまほろば診療所の院長 仙川先生は、西田敏行さんが演じていましたが、彼も亡くなりましたね。
前作の紹介記事はこちらです。
物語は、能登の穴水町の病院で、「緩和ケア病棟エキスパート看護実習」をすることになった星野麻世を中心に展開します。
能登半島の美しい風景を背景に、余命わずかな患者たちの最後の旅立ちを描いています。麻世は「緩和ケア科」で学び、患者の苦痛を取り除くことに尽力します。彼女は、激しい痛みを抱える老婦人や、認知症と癌を患う父親に対する息子の葛藤など、様々なケースに直面します。
最新の緩和ケアに対する考え方などもよく調査されており、世間一般の誤解を解くような内容となっています。
治らない癌患者の最後はどのように過ごすのがいいのか、家族はどのようなケアをしてあげればいいのか。それらの問題点が感動的な話として丁寧に描かれており、がん患者が最後をどのように迎えれば良いのかという悩みにも的確な方向が示されています。
がんの厳しい疼痛に苦悶しながらも、頑なに医療用麻薬を拒否する老婦人。麻世は何とかして麻薬を使うように説得するのですが聞き入れられません。そしてある時にその原因を知ることになります。その夫人の息子さんが麻薬中毒になり亡くなっていたのです。
いずれはやってくる死をどのように迎えるべきか。考えさせられる小説です。